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サブカルの戯言 2008年6月

第73回:6月1日
清水ミチコって改めて見てみると結構面白い。

第74回:6月6日
今話題のミンミを見るたび、ミイミを思い出してしまう。

第75回:6月7日
岡村靖幸について書くのもこれで一旦一区切り。

第76回:6月13日
田村正和が宣伝している「麦とホップ」を飲んだ。これは騙される。普通にビールの味がした。

第77回:6月14日
「犬夜叉」が来週発売のサンデーで連載終了。次回作に期待!

第78回:6月20日
木曜日にXJAPANのTOSHIのインストアライブに行ってきた。声量ありすぎて笑った。空気が震えてたよ。レポは近いうちに書こう。

第79回:6月22日
やーっと岡村靖幸の著「純愛カウンセリング」をゲットできた。今、120ページくらいまで読んだけど、面白い。純愛のオムニバスって感じだなぁ。近いうちに感想を書こう。

第80回:6月28日
今さらだけど、パフュームのどこがいいんだか分からない。

第81回:6月29日
昨日のスマステは80年代ブームベスト20だった。80年代は面白いが、そんな高頻度で80年代特集を組まれても飽きる。
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岡村靖幸の記事/2カ年計画

久々にネタ切れ気味だ。ここ2~3ヶ月の間は脳内にブログのネタが常に一つはフワフワと思い浮かんでいたのだけど、今は何も思い浮かばない。せっかくの機会なので、これから2010年5月までの2年間の間に書く岡村靖幸の記事を考えようと思う。やっぱり、岡村靖幸の記事を核としている本ブログでは、常に岡村靖幸の記事がトップページ内に存在していないと寂しいし。

言うまでもないが、2010年5月というのは岡村ちゃんが刑執行終了し出所できると思われる時期だ。つまり、2010年5月まで岡村靖幸側からのアクションは何もない。それ以降も治療に専念するらしいので(詳しくはコチラ)2010年5月以降も表立った活動はないと思うけど、とりあえず目安として2010年5月までのオツトメ期間中に本ブログで書く岡村靖幸の記事をいろいろと考えてみた。


その1、岡村靖幸に関するさまざまな雑記
先週書いた「岡村靖幸の歌唱力を舐めるなよ」のような、日ごろ、岡村靖幸の音楽や動画に接している時にふと思ったことを書く。例えば「そういえば、岡村靖幸ってなんで髪染めないんだろう」とか「歌詞に〝戦争〟ってワードが結構出てくるけど岡村ちゃんにとって戦争って何なのだろう」みたいな、瑣末な事柄でもふと思い浮かび気になったことがあれば随時記事にする。

その2、ライブDVD 全曲実況
岡村靖幸に関する雑記なんてものは、2010年まで定期的に思い浮かぶ類のものではないので、先日終了した全曲解説のようなシリーズで書けるものがあった方が何かと都合が良い。ということで、思いついたのが岡村靖幸のライブDVDを全曲解説と同じ要領で書くというもの。一応映像なので〝解説〟ではなく〝実況〟と銘打ち、収録されている映像を1曲単位で実況していくというもの。岡村靖幸のライブDVDは6作品あるでのこれで定期的に6回分記事が書ける。

その3、純愛カウンセリング、各章の感想
先日ゲットした「純愛カウンセリング」の感想を書く。この本は岡村靖幸が純愛を共通のテーマとして掲げ、各界の8人にインタビュー形式の対談をしたものである。8人いるということは、8回分の記事が書ける。最後に純愛カウンセリングの総評を書けば9回分になる。

その4、PVレビュー
文字通り、岡村靖幸のPVのレビュー。手抜きのPVが多いが初期の頃のPVは突っ込みどころが多いのでいろいろと書けるだろう。後期のPVは岡村靖幸本人が登場していないので難しいが、なんとかなるだろう。岡村靖幸のPVは全部で18ほどある。ということは18回分の記事が書ける…?一つのPVでそんな何文字も書けないよなー(梅干一個でご飯一杯食べるようなもんだ)。1記事に対して2つか3つのPVレビューが妥当だろうか。6~8回分の記事になるかな。

その5、MUSICA、2007年8月号の文字起こし
岡村靖幸が2007年の再復活の際にインタビューを受けたMUSICA2007年8月号の文字起こし。この号のMUSICAはまだ発売されてから1年も経ってないし、今でも入手できるだろうから、文字起こしはまだまだ先の話になると思う。2分割に分けて文字起こしをして、さらにインタビュー内容の感想を書けば3回分の記事になる。



今から2010年5月まで、単純計算で22ヶ月ある。その1~5までの記事を足すとだいたい(その1の記事数の予測が難しいが)40くらいはいくだろう。つまり、2010年5月までの間に岡村靖幸の記事を月に2回はアップできる計算になる。スッバラシイ。十分じゃないか。
しかし2010年5月までの日々は、遠くはないが決して近くもない未来である。何があるかは分からない。人生はワインディングロード…。2年後、岡村靖幸を自然と聴かなくなっているかもしれないし、聴いていたとしても面倒くさくなってやめるかもしれないし(可能性大)、そもそもブログをやめてるかもしれないし、あるいは死んでるかもしれないし。というのも、僕の祖母が一ヶ月前に亡くなったのだけど、今週祖父も亡くなった。僅か一ヶ月間の間に2回も葬式があった。何十年も会わなかった親戚と1ヶ月の間に2回も会うとはな。もともと体が去年からかなり悪かったのだが、それでもなんとか持ちこたえていたのは婆ちゃんが居たからだったんだな。―――話が脱線したが、まあ、ということで、その1~5までの約40ほどの記事が、2010年5月まで本ブログでコンスタントにアップされ続けるのかどうかは、〝神のみぞ知る〟だが、なるべくなら書こうと思う次第である。

岡村靖幸の記事

TOSHI インストアライブ inアリオ札幌

6月19日にアリオ札幌で行われたTOSHIのインストアライブを見てきた。「EARTH IN THE DARK~青空にむかって~」リリース記念、という名目で現在全国各地で行われているTOSHIのどさ回りである。それにしても、こんな地方に来るなんて凄いな。アリオ札幌は札幌の中心街の近くに建っている大型ショッピングモール(時計台から自転車で10分もあれば着く)であり、そこそこ都会だが、その後、清田区のベガロポリスや苫小牧のTSUTAYAなんかでもインストアライブをやったみたいだ。苫小牧のTSUTAYAって…凄まじいほどに田舎だよ。一体TOSHIの原動力は何なのだろうか?

アリオ札幌でのインストアイベントは18時からだったのだが、僕がアリオに着いたのは17時55分だった。イベント会場に近づいていくとシングル「EARTH IN THE DARK~青空にむかって~」のインストが流れているのが聴こえてきた。なんだか、XJAPANのライブのエンディングで流れる「Say Anything」みたいだな、と思いニヤニヤしてしまった。

会場は思いのほか混雑していなかった。客層は前列の方に何人か、いかにもXのファンと思しき若者がいたが、全体的には「たまたまスーパーに居合わせた人が集まったらこんな客層になりました」、みたいな面々だった。お爺ちゃんも居れば子供もいた。主婦もいれば高校生もいた。でも、若干、髪をやや派手目に染めている人が多かったかもしれない。そんな客層の人々が100人程度集まっていた。会場の上は3階の天井まで円形の吹き抜けになっているため、2階3階の手すりから見下ろしている人もたくさんいた。それを合わせると200人弱くらいいたかもしれない。

僕は1階のステージが真正面に見える位置から見ることにした。一番後ろだったがそれでも余裕でTOSHIの一挙手一投足が観察できる好ポジションに陣取ることが出来た。ステージにはTOSHI用の椅子と司会者用の椅子が二つ配されており、ステージの下手には関係者専用の白いテントが張られていた。テントの回りには警備員が4人ほど立っていたので「あのなかにTOSHIが!?」と内心ドキドキする。

やがて司会者がステージ上に現れ、注意事項を話したり拍手の練習をさせたり、と前説がはじまった。一通り終わると「もうまもなくTOSHIさんが来られますので、今の拍手の2倍の大きさでお迎えしましょう」と司会者の女性は言った。まもなく来るということはあの白テントはダミーか?ではどこから来るんだ?と考えた瞬間、どよめきが!なんとTOSHIは普通の通路から来た(両脇に服屋のテナントが入っていて、通路の真ん中にはベンチがあるごくごく普通の通路)。ってかその通路、僕が僅か5分前に歩いてきた通路ではないか!あと5分来るのが遅れていたらニアミスしてたかもしれない。あるいは一緒に並んで歩いていたかもしれない。

TOSHIが姿を見せた瞬間、前説時の拍手の2倍どころか、10倍くらいの大きさの拍手と歓声があがった。TOSHIはサングラスをかけ、トーンの落ち着いた白のスーツを着ていた。TOSHIの第一声は「え~、じゃ何をしましょうかね。質問でも受け付けましょうか」だった。なんとはじまって僅か数秒で質問コーナーへ(段取り良すぎだろ)。

質問は全部で10個くらい受付け、答えていた。質問されるたびTOSHIはほぼ即答で答えていた。質問の合い間には小まめにミネラルウォーターを飲み、終始喉を気遣っているように思えた。以下、僕が記憶している限り、質問コーナーのやり取りを記したいと思う。言うまでも無いが、やり取りの一言一句まで正確ではない。それどころか、話の大まかなアウトラインすら間違えているかもしれない。最悪勝手に話を捏造しているかもしれない。それくらい、うろ覚えだ。まあ、流す程度に読んでもらえればちょうど良いかと。



Q、相変らず、艶やかで美しい歌声ですが、日々何か努力はなさってるのですか?
A、してません。努力は嫌いです(笑)。この10年間ほぼ毎日歌ってきましたので、それがよかったのかもしれないです。

Q、今までのライブで一番印象的で、これは感動したなってライブはどれですか?
A、昔のライブはほんと覚えてないんですよ。記憶が無くて。う~ん、なんですかね。一番最近のライブが一番いいんじゃないですかね。だから、今日この後、歌いますけど、まあこれはライブじゃないですけど、今日歌うのが一番だと思いますけど。(ここで質問者が「じゃあ3月のライブですか?」と少し意味不明な質問を再びする)3月というのはXですか?そうですね、Xでだったらこのまえの3月のライブが最高ということになるんじゃないでしょうか。

Q質問が聞き取れなかったが、たぶん「北海道でなにかおいしいもの食べましたか?」というような質問内容だと思われる。
A、今日ここに来るの遅れたんですけど、「信玄」ってラーメン屋で、みそラーメン食べたんですけど美味しかったです。で、チャーハンも頼んじゃって今おなかパンパンです。もうメタボです。サングラスが頬に乗ってますから。昨日もお土産で貰った「とうきびチョコ(※北海道限定発売のお菓子)」食べて、もうやめようと思うんだけど次のを開けてるんですよ。結局2個だけ残して全部食べちゃいました。
函館では毛ガニを食べました。美味しかったぁ。あと魚、なんだっけ(と言いスタッフらしき人に聞く)ホッケだ。ホッケが美味しくて、ご飯も大盛りで食べてしまって。もう太ってしまいました。北海道のせいです。今はぐったりしてます。だから今日、ここに来たくなくて。やる気ないです。(小声で)はやく帰りたい。

Q、TーEARTHのCDはリリースされる予定はあるのですか?
A、今レコーディング中です。夏にライブします。札幌でもします。なので夏くらいには音源が出ると思います。

Q、TーEARTHのメンバーは?
A、まだ言えないですが、基本的には来るものは拒まず去るものは追わずです。モーニング娘みたいにメンバーは固定しないでやりたいと思います。

Q、一番好きな曲は?
A、難しいなぁ~。う~ん。ソロだと「愛の歌を歌いたい」かな。(その後MASAYAや癒しについて話していたような)

Qコラボをするとのことですが、からみたいというか共演したい人はいますか?
A、からむですか(笑)。からむなら若い女性がいいですね。最近はかわいい男の子にも興味がありますけど。こんなこといったらまた書かれるな。嘘です。(この後コラボに関して話していたが内容は忘れた)



質問コーナーが終わり、「EARTH IN THE DARK~青空にむかって~」の歌を披露することに。遂にTOSHIの生歌が聴ける、と思いワクワク。ステージから椅子が片付けられ、
「EARTH IN THE DARK」のカラオケが流れる。静かに囁くように歌い始めるTOSHI。2フレーズ目辺りで、グっと力一杯声を出す所があるのだが、そこで痺れた。声量が予想異常にあったよ。空気が振動していたもの。例えるなら、ドラゴンボールでゴクウがスーパーサイヤ人になった時みたいな感じ。風がブワっと発せられて水面が波立つみたいな…。やっぱり歌を歌うことを20年以上もの間、仕事として生きてきた人の歌って凄いよ。僕の前に立っていた30代くらいの子供づれの女性は泣いてたし。それくらい圧倒的だった。

ただ、歌は凄いのだけど内心冷めている自分がいた。目の前にいるTOSHIという存在になぜかそれほどテンションが上がらないのだ。自分で自分を盛り上げるため脳内で「TOSHIがいるんだぞ!あのYOSHIKIと親友で、HIDEとも仲の良かったあのTOSHIが目の前にいるだぞ。10年以上も前から聴きつづけて来たXのボーカルだぞ。もっとドキドキするべきだろ」と己を昂ぶらせようとするのだけど、いまいち熱くなれない。…というのも、やはり場所が悪いんだな。だって、TOSHIが歌っているすぐ上にはエスカレーターがあるんだから。そのエスカレーターには常に誰かが乗っていて、真下にいるTOSHIを見つけては「おい下見てみろよ、TOSHIいるよ」「うわ、マジでいるじゃん。ハハハ」みたいな様子で見下ろしてんの。もちろん照明のライティングもないし。ステージも平台だしね。ロケーションがちょっと悪い。しょうがないけど。

歌が終わると、TOSHIは何も言わずにステージ横の白いテントに入った(そのためのテントだったのか)。TOSHIと入れ替わりに司会者が現れ、サイン&握手会の説明をする。どうやら、物販コーナーで4500円以上買うとサインと握手が出来るとのこと。しかし、サインの受付は前の人から順々にするらしく、僕のいる一番後ろに順番が周ってくるまでには結構時間がかかりそうだった。その後、まだ別の用事が残っていたため、泣く泣く帰ることに。TOSHIが通ってきた通路を引き返しながら会場を背に歩いていると、後方から声援が。どうやら白テントからTOSHIが再登場したらしい。後ろ髪を引っ張られる思いで、アリオ札幌を後にしたのであった。

岡村靖幸の歌唱力を舐めるなよ

1995年にリリースされた5枚目のアルバム「禁じられた生きがい」以降岡村靖幸は表舞台から姿を消し引きこもった。シングルのリリースやプロデュース業による活動はあったが、表舞台に立ちファンの前に姿を見せる機会は無くなった。そして、21世紀に突入してからロッキングオンの編集長だった鹿野さんと出会い徐々に(まるでリハビリのように徐々に)復活の手筈を整え、2003年に久々の全国ツアー「フレッシュボーツアー」で復活した。

復活したものの、2003年以降の岡村靖幸に対して、多くのファンは主に二つの改善点を口には出さずとも胸の内に抱いていただろう。ひとつは体型。もうひとつは声。はっきりと言ってしまえば、数年ぶりに復活を遂げた岡村靖幸は、凄く太っており、歌唱力はひどく劣化していた。

このような近年の状況から岡村靖幸は一般的に「歌唱力に難あり」な部類にカテゴライズされがちだ。僕も正直2003年以降の岡村靖幸の曲を聴くたび「声がもうちょっと、どうにかならないのか…」と常々思っていた。でも、これは間違いだ。いや、間違いというか…もっと正確な言葉で表現するなら「正当ではない」だろうか。というのも、先日YOUTUBEでつんくが歌っている「イケナイコトカイ」を視聴し、その後YOUTUBEの画面の右側に表示される関連動画のなかから「ライブ家庭教師91」で岡村靖幸本人が歌う本家の「イケナイコトカイ」を聴いた。つんくと本家の「イケナイコトカイ」を立て続けに聴いて僕は思ったのだ。「岡村靖幸は歌が下手」というのは正当ではない!と。

論より証拠。まずは、つんくが歌う「イケナイコトカイ」を視聴してみよう。


結構前からアップされている動画なので岡村靖幸ファンなら既に一度は視聴したことがあるだろう。つんくの歌う「イケナイコトカイ」を俯瞰し冷静に評するならば「上手く歌えている。決して悪くはない」という意見が大半を占めるのではないかと個人的には想像する。もともとつんくは歌が上手い方だ。抜群に上手いというわけではないが、プロの歌手として平均的な歌唱力を有している。また、歌を実力以上に上手く聴こえさせる術や小手先のテクニック(ブレスやファルセット)のバリエーションは、―――彼のプロデュースするモーニング娘の歌い方にも如実に現れているように―――幅広い。それらを加味した上で総合的に「歌い手・つんく」を眺めた時、つんくは上々の実力を備えた歌手といえるだろう。

では、次にこちらの動画を視聴してみよう。


御存知、傑作ライブDVD「ライブ家庭教師91」に収録されている「イケナイコトカイ」だ。贔屓は一切なくし陪審員の如く公正につんくの「イケナイコトカイ」と比較してみよう。どうだろうか?あらゆる点で岡村靖幸のほうが勝ってはいないだろうか。はじめの歌いだしの「イケナイコートカ~イ♪」の第一声の声量からして大人と子供ほどの違いがある。ファルセットの響き具合も格が違う。後半、座り込みマイクスタンドを抱えるように持ちながら、まるで感情の塊を直接吐き出すかのように地声を搾り出す歌唱法は圧巻だし、パフォーマーとしての表現力も豊かだ。桁違いに岡村靖幸の方が上だ(ちょっと贔屓目過ぎるかな?)。

断っておくが別につんくを貶しているわけではない。上述したようにつんくの歌唱力は〝上々〟なのだ。つまりは岡村靖幸の歌唱力が半端なく高い、ただそれだけのことなのだ。そう、岡村靖幸は歌が上手いのだ!近年は声が潰れているため下手に聴こえるが本来は上手いのだ。これほどまでに本来は上手い人なのに、2000年代に入ってからの声帯の不調により、歌が下手というレッテルが貼られてしまうのはちょっと酷というか、〝正当ではない〝と思う。〝岡村靖幸の歌唱力を舐めるなよ〟と思うのだ。岡村靖幸の歌唱力を再確認させてくれたつんくに感謝したいと思う。

それにしても、昔はこれほどまでに超絶な歌唱力を誇っていたのに現在は一歩間違えればそこら辺の素人よりも声が出ないという状況はかなり深刻だよなぁ。岡村靖幸の胸中には計り知れないほど辛いものがあるのだろうな。歌を歌うたびに全盛期の頃の、ファルセットはガンガン響き、声にはハリと伸びがあった自分を嫌でも思い出すだろうし、そのたびにジレンマに陥るだろう。岡村靖幸自身には上手に歌えていた頃の感覚や記憶がリアルな残像として今でも残っているだろうし。

リアル(7巻)

今さらだが去年の暮れに発売された、井上雄彦の漫画「リアル(7巻)」の感想を。「リアル」はスラムダンクの連載終了後、週刊ヤングジャンプにて不定期で連載されているバスケ漫画である。不定期といっても1年単位で見ると見事なまでに定期的だ。2001年にリアル1巻が発売されてから1年に1巻の超スローペースで毎年11月頃に発売されている。2001年に1巻、2002年に2巻、2003年に3巻…そして、リアル7巻は去年の暮れ2007年に発売。実に定期的だ。

スラムダンクと同じバスケ漫画でも「リアル」は〝車椅子バスケットボール〟だ。なので自ずとスラムダンクのような、友情・努力・勝利の3つでもって少年の心を鷲づかみにするというドラマチックなスポーツ根性物語ではない。「リアル」の主要な登場人物は3人。皆それぞれに、深刻な悩みを抱えていたり、事故で車椅子生活になり絶望していたりする。ジャンプでこんな重くて暗くて鬱な漫画を描いたら、きっと読者アンケートによる人気はあまり芳しいものにならなかっただろう。というか、それ以前にジャンプ紙上では「リアル」のようなシビアな物語はそもそも掲載されないだろう。

仮にジャンプに「リアル」が掲載されたとしたら、「友情・努力・勝利」の原則の下―――まず、戸川清春の足は治り(まるでクララのように劇的に)バスケの名門高校に転入しインターハイに出場し全国制覇するだろう。野宮はバイク事故で一生の障害を負わせてしまった山下夏見と交流を持ち、次第にお互い愛情が生まれ、「俺が夏見の足になる」的なことを言い、幸せな結婚でもするだろう。下半身不随になり人生を転落した(AランクからEランクだっけ?)高橋は捻くれた考えを改め昔のアットフォームだった頃の家庭を取り戻し、心から幸福な笑顔を見せるだろう。「友情・努力・勝利」の原則の下では、どんな人間もドラマチックで奇跡的な展開の末、ハッピーエンドになる。しかしそれは少年漫画のなかの世界の話。現実(リアル)は違う。

上記の主要登場人物3人(戸川、野宮、高橋)は皆一様に人生の軌道に乗れず、くすぶっている。リアルは2001年にはじまった漫画だから、つまり単純計算で7年間ずーっとくすぶっている。くすぶって、煮詰まって、こじらせて「ああぁーもうっ、どうすりゃいいんだよ!!」と発狂してしまいそうになる感じが「リアル」の真骨頂であり他の漫画と一線を画している点だ。

以下ネタバレあり。
最新刊「リアル(7巻)」はタイガース対ドリームスの試合を中心に物語が展開している。戸川清春が所属する弱小チームのタイガースと強豪チーム・ドリームスの試合。この試合に負けたら有望な戸川清春はドリームスに移籍する約束をしてしまう。そして激戦の結果タイガースは負ける。悔しさのあまりトイレで号泣する戸川のシーンで7巻は終わる。負けてしまったものの、戸川に関しては既に自分の道を見つけているような気がする。少なくとも「リアル」の登場人物のなかでは最も健全な道を突き進んでいるだろう。この先ドリームスに入るのかは分からないが(売り言葉に買い言葉の口約束だし)どちらにせよ、車椅子バスケとしてのトップ選手に昇り詰めるのだろう。

そんな一生懸命に汗をかき激しくスポーツしている戸川清春を見守るのは、バイク事故で車椅子生活になった元暴走族の亮。車椅子生活になってから、仲間からの連絡は途絶え、くすぶっていた亮は、戸川率いるタイガースの練習や試合を見学し驚く。練習中チームワークが乱れ喧嘩になったタイガースのメンバーを見て「障害者って喧嘩しないんじゃないのか」とか「障害者ってもっと大人しくて優しいんじゃないのか」と思い、タイガースの選手達たちは障害者の前にスポーツマンであることに心を動かされる。そして亮は自分とタイガースの選手を対比し、己を省みた時、〝障害者としての自分を認めず消していた〟ということに気付く。ここが7巻のハイライトだろうか。

野宮は「人生は地続きだ」と悟り、生きがいを感じはじめた引越しのバイト先の会社が倒産(運悪いな、野宮)。倒産の知らせを受けショック状態な野宮はその帰り道、公園のベンチに座りぼんやりしていると、頭の悪い高校生が数人で犬をいじめていた。マジックで犬に眉毛を描いたり「額に肉って書こうぜ」「肉ってベタだな」とか言ったりして…。そんな高校生を見て野宮はキレる。高校生と乱闘。野宮流血。やがて警察が来る。野宮逃げる。…相変らずくすぶっている。でも、逃亡後、血だらけになりながらも「タイガース対ドリームス」の試合会場に足を運び、亮の隣でタイガースを応援している野宮の姿はちょっとカッコイイと思った。

「リアル」における最大の問題児・高橋は、7巻には一度も登場せず。これまでいけすかない最低なヤツだった高橋は6巻の最後で号泣。読者の同情をかった。あの号泣が、良い方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか、もしくはどちらにも向かわず平行線のままなのかは分からないが、高橋がこの先どうなるのかは興味深い。山田玲司の「絶望に効くクスリ」で取り上げられた井上雄彦の回を読む限り井上雄彦はかなり熱い男のようなので、高橋の行く先にはきっと救いがあると思うけど。
高橋の活躍(活躍っていうか、なんていうか…)は、2008年秋に発売予定の8巻に期待。


250円コーナーに潜む名盤

ブックオフのアルバム250円コーナーが好きだ。定価3000円のアルバムを250円で買えるというお得感はもちろんだが、それよりも特筆すべき点は250円コーナーの棚のラインナップだ。2008年において時代錯誤な90年代のミュージシャンのCDがバンバン置いてあるのだ。GAOとかヒステリックブルーとかWANDSとか岡本真夜なんかが我が物顔で陣取っている。

250円コーナーにおける、時代を超越したカオスなラインナップがたまらなく好き。サブカル魂の血が疼く。250円コーナーのなかのお買い得品は――まあ普通に考えれば――現在でも第一線で活躍しているミュージシャンが90年代中盤にリリースし、バカ売れしたアルバムだろう。ビーズやらドリカムやらグレイやらラルクやら安室やらZARDあたりのバカ売れしたアルバムは現在価格破壊の末、250円で置いてある。

上記に挙げたミュージシャンのファンに最近なった人は、ブックオフの250円コーナーで過去の作品を買え揃えれば、これほどお得な話は無いだろう。最近ビーズのファンになった人が居たとしたら、今週リリースされる4200円のベストアルバム「ULTRA Plasure」を買うよりも、250円コーナーに置いてある過去のビーズのアルバムを買い占めたほうが(…4200円あれば16枚も買える!)お得だろう。まあCDが売れない時代にこんなことを言うのもアレだけど。

しかし、もっとお得なのは廃盤になっている隠れた名盤だ。つまりは掘り出し物ってヤツ。廃盤になっているということは、つまりは需要が無いわけだが、「人気が無い=駄作」とはならない(そんなこと言うまでも無いか)。ということで、今日は僕の独断と偏見で選ぶ250円コーナーの隠れた名盤やミュージシャンを紹介する。


●TIME THE MOTION/小比類巻 かほる★★★
こひるいまき、と読む。岡村靖幸と同じく80年代後半にエピックからデビューした歌手。シティハンターのオープニング曲「City Hunter~愛よ消えないで~」は誰もが一度は聴いたことがあるであろう名曲。注目すべきは6枚目のアルバム「TIME THE MOTION」。このアルバムに収録されている、「MIND BELLS」と「BLISS」の2曲はなんとあのプリンスがプロデュースしているのだ。曲自体はモロプリンスの曲って感じで、小比類巻かほるの声とは正直あまりマッチしていない。プロデュースというよりは、プリンスの膨大な曲のストックの中から適当に2曲選んで歌わせた、といった印象。しかしあのプリンスが日本人歌手のプロデュースを手掛けたのは、小比類巻かほるが最初で最後である。これは一聴の価値アリ。

●馬渡松子★
この人も難しい漢字だな。まわたりまつこ、と読む。幽遊白書の主題歌を歌っていた人と言えば分かる人も多いだろう。幽白のOP「微笑みの爆弾」(アリーガトーウゴザイーーマス!!♪)や「ホームワークが終わらない」「デイドリーム・デイジェネレーション」あたりが代表曲なのだが、どれも名曲である。馬渡松子はアニソン歌手ではなく、作曲、編曲を自らこなすいわば女版岡村靖幸のような実力派ミュージシャンだ。音楽のジャンルもソウルフルでブラックミュージックテイストな所は岡村ちゃんっぽく、聴き応えがある。元ドリカムのバックコーラスをやっていただけあり、歌唱力が凄く高い。歌声が幽遊白書に登場するコエンマの声(クリリン、ルフィの声の人)に似ている。なので馬渡松子のアルバムを聴いていると、まるでコエンマが歌っているかのように聴こえてちょっと面白い。

●3・2・1 /zilch★★
hideのソロアルバムは250円コーナーに置いてないが、zilchの「3・2・1」はなぜか結構な頻度で置いてある。一般的には、hideのソロ作品よりこちらのほうがレアなアルバムだと思うのだが、ブックオフの市場メカニズムのなかでは、「zilch」の方がランクが極端に下らしく250円で買える。ナイン・インチ・ネイルズを2,3千円払って買うくらいだったら「zilch」を250円で買ったほうが賢い買い物かもしれない。

●オリジナル・ラブ★★★★★
フリッパーズギターやピチカートファイブと同じ系統として語られることの多い、渋谷系(渋谷系って何だ?)のオリジナル・ラブ。良質な音楽を世に発表し続け、ファロワーもたくさん現れるほどの実力派バンド。J-ポップの良心でありながら、250円コーナーの常連なのが悲しい。

●林田健二★★★★★
曲の提供が多いので作曲家として裏方のイメージが強いが、昔は〝林田健二〟名義でアルバムを何枚か出している。SMAPに提供したクオリティの異様に高いファンク系の曲(「$10」「青いイナズマ」「KANSHAして」など)を思い起こせば直ぐに分かるだろうが、ほんのちょっとだけ岡村靖幸に似ている。林田健二も岡村靖幸のようにライブで「フォー」と叫んだり、踊ったりするらしい。岡村靖幸の代わり(お茶を濁す程度になら)に聴くのにちょうど良い曲がたくさんある。特に「RAPHLES Ⅴ」は名盤。


付記
★はブックオフの250円コーナーに置いてある確立を5段階で示したものだ。★が多いほど置いてある確立が高い。札幌市内にある数件のブックオフを基準としているため、統計学的には全く信用できないが、大きな間違いはたぶんないと思う。

ニヤニヤの総合商社・らんま1/2

ranma90年代に大ヒットした高橋留美子大先生の代表作「らんま1/2」。先日ふとしたきっかけでニコ動で「らんま1/2」を視聴したのだが…もう、止まらない。一度見はじめたら止まらない。ずーっと見続けてしまう。「明日も早いし、もう寝ないと」と頭では分かっているのだが、エンドレスで見続けてしまう自分が居る。

何年ぶりかに改めてじっくり「らんま1/2」を視聴して分かったのだが、このアニメの優れている点はズバリ〝ニヤニヤ〟だろう。これほどまでに秀逸で良質なニヤニヤがコンスタントに繰り出されるアニメはそうはないだろう。ニヤニヤ以外にも、高橋留美子の真骨頂とも言える何でもありなギャグセンス、ラブコメなのにかなり本格的に描かれるバトル描写、マンネリを防止するため湯水の如く次々に登場する個性的でユニークな新キャラ、などなど飽きさせない要素がたくさんある。ニヤニヤやらギャグやらバトルやらが絶妙に交じり合い融合した結果、高橋留美子以外の誰にも真似できないオンリーワンな〝ルーミックワールド〟が形成されている。

やはり「めぞん一刻」にしても「うる星やつら」にしても高橋留美子のマンガの真骨頂は嫉妬(やきもち)にある。五代と響子、あたるとラムの関係性も嫉妬があってこそだ。そういう意味では「らんま1/2」の次に連載が開始されたの「犬夜叉」は好きになれない。「犬夜叉」はバトルに重きが置かれているため、嫉妬が希薄なのだ。要するにニヤニヤ出来ないのだ。僕は高橋留美子作品でニヤニヤしたいのだ(一体いつになったら犬夜叉は終了するんだろうか?)。「らんま1/2」は「めぞん一刻」や「うる星やつら」以上に嫉妬が上手に描かれている。ということで、今日の記事では「らんま1/2」のニヤニヤポイントをいくつか挙げてみようと思う。


その1、許婚
主人公のらんまと天道あかねは、互いの親同士が勝手に決めた許婚という関係にある。それを知ったらんまは「こんな、がさつで寸胴でかわいくない女が許婚?ふざけんな」、あかねは「変態で優柔不断で女たらしな女男なんて大嫌い」とお互い嫌悪感を抱く。しかし、この二人は稀代のツンデレであった。なので、表面上は嫌い合っているものの、本心はお互い気になって気になって仕方が無いのだ。この「表面上は嫌いあっているのに許婚」という設定は「らんま1/2」におけるニヤニヤの温床となっており(ニヤニヤは悪じゃないけど)、故にあらゆる局面でニヤニヤ展開に突入しやすいギミックとなっている。

その2、らんまがモテまくる
らんまはとにかくモテる。中国の女傑族のシャンプー、お好み焼きのうっちゃんこと右京、九能の妹・小太刀の3人から激しく求愛されている。らんまを自分の夫にするため、この3人はらんまに激しく懇親的なアプローチをする。らんまはハーレム状態である。しかしらんまの本心はあかねにあるため、3人に対していつも煮え切らない対応で誤魔化す。そんな優柔不断ならんまをムスっと見ているあかねというシチュエーションにニヤニヤ。

その3、あかねもモテる
らんまほどではないが、あかねもモテる。主にらんまのライバル、良牙(Pちゃん)と剣道部の主将、九能から好意を寄せられている。普段はあかねから嫉妬される立場の多いらんまだが、たまーにあかねが男達に囲まれていたり、見知らぬ男とデートをしていたりすると、たちまち立場が一転しらんまが嫉妬する。普段は「女なんか興味ねーよ」と冷めたスタンスを取っているらんまの嫉妬にニヤニヤ。

その4、女らんまがコケティッシュ
「らんま1/2」には魅力的な女性キャラが数多く登場するが、一番かわいいのは女らんまだ(説明するまでも無いだろうが――らんまは中国にある呪泉郷に落ちてからというもの、水をかぶると女になってしまうのだ。ちなみにお湯をかぶると男に戻る)。らんまは女になると、髪は真っ赤になり、背はあかねよりも低くなり、目の周りには紫のアイシャドウが入り、巨乳になる。そして声優はあの林原めぐみが担当している。「ハートフルステーション」に登場する林原めぐみの別人格〝めぐっち〟のような甲高い声が女らんまの風貌に合っている。シャンプーや右京やかすみお姉ちゃんなんかよりも女らんまの方が遥かにコケティッシュである。そんな女らんまに、久能や良牙は想いを寄せる(良牙は女らんまの正体を知るまでの短期間のみ)。しかし女らんまは基本は男だ。つまりややっこしいが本質的にはBLである(?)。90年代において時代を先取った新感覚の801に2828。

その5、ポロリもあるよ
アニメ「らんま1/2」の放送時間は夜の7時30分からだった。その後の再放送では朝や夕方にも放送された。このようにオールタイムで放送されたアニメであるにも関わらずお色気シーンがたっぷりある。ある種の境界線となっている乳首もバンバン映っている。同じくゴールデン番組で主人公が全裸になるアニメといえば、藤子・F・不二雄による「エスパー魔美」が思い起こされるが、魔美なんかよりも女らんまの方が桁違いでエロい。今の時代ではありえないお色気シーンが乱発している。まあ、らんまは元々は男なので許されたのだろうか(そんな理屈は通らないか)。その1~4と比較すると安易且つ直截的なニヤニヤ理由だが、女らんまのポロリは「らんま1/2」を語る上で無視することの出来ないニヤニヤポイントである。

らんま1/2ニヤニヤ動画集

ゲームの逆襲がはじまる?

6月12日は「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット(略:MGS4)」の発売日だ。このブログを日々読んでくれている人は―――勝手に推測するに―――ゲームに疎い人が多いと思うので(かくいう自分も疎い方だけど)説明すると、これは凄いことなんです!超ビッグタイトルの最新作で、ゲーマーにとってはいわばドラクエやFFのナンバリング最新作が発売されるのと同じくらい話題性があることなんです。

しかもMGS4の発売は日本だけではなく世界中で注目されている。ドラクエやFFは国内での人気は凄まじいが海外ではそれほど人気はない(特にドラクエ)。発売日に店の前に行列が出来たり、盗難が発生したり、ニュースで取り上げられたりはしない。しかし、MGSシリーズは世界各国に熱狂的なファンが存在し、MGSシリーズの監督・小島秀夫はカリスマ扱いされている。今週6月12日の発売だって日本だけではなく、アジア、欧州、北米での同時発売なのだから凄い。試しに今「メタルギアソリッド4」でブログ検索してみれば一目瞭然だが、2~3分単位メタルギア関連の記事が洪水の如く更新されている。「METAL GEAR SOLID 4」で検索すれば世界中のMGSファンが心躍らせながら記事を更新していることだろう。それくらい世界規模での注目ソフトなのだ。あの何かと不評なPS3がハードにも関わらず予約だけで既に50万本を突破してしまう(ホントか?)ほどのキラーソフトなのだ。

MGSシリーズのジャンルはRPGではない。戦略諜報アクションゲームだ。
悪事を企む国家がらみの組織やテロリストを倒すため主人公のスネークは、単身で組織の要塞やら工場やらに侵入する。もちろん大きな組織と戦うのにスネーク一人では無理だ。故にスネークは隠密行動となる。つまり生死をかけた究極のかくれんぼ。これがMGSの最大の魅力なのだ。アクションゲームであるのになるべくアクションしないことが求められる。時にはダンボール、時にはロッカーに隠れ組織の人間に見つからないようにドキドキしながら潜入する。この緊迫感がたまらない。ゲームなのにすっごい緊張してしまう。リアルにスパイの気分が味わえる。手のひらからは汗が出る。

MGSの最もドキっとする場面は敵に見つかってしまった時だろう。見つかった瞬間に流れる突発的な効果音は、そこら辺のホラー映画よりもビクっとする。あれ、心臓が弱い人だったらショック死するかもしれない。それくらいビクっとする。でもこのドキドキ感がMGSの醍醐味だ。もし敵に見つかってしまった場合は、本部に連絡される前に相手を絞め殺すか催眠銃で眠らすかなどの手段を取る。それが出来なかったら一先ず逃げる。ダンボールのなかに隠れ、警戒態勢が解かれるまでじっと待つことになる。通路に監視カメラがあれば、銃で壊し進む。その際は銃声が鳴らないようにサプレッサー(消音機)を装着する。また、赤外線センサーがあれば、かいくぐるようにほふく前進で進む。そのようにして細心の注意を払いながら侵入し組織の中枢にまで忍び込み、極秘情報を手に入れ上官(大佐)に報告する。敵の親玉が居れば始末する。んで、世界は平和になる。…といった感じのゲームだ。

アクションゲームなのにアクションせず隠れるという要素だけで十分MGSは画期的なわけだが、MGSにはもうひとつ強みがある。それはMGSの監督・小島秀夫のつくるシナリオだ。ゲームなのにそこら辺の映画より遥かに練られた物語が展開されるのだ。特にMGS3は泣ける。ゲームなのに感動できるのだ。アクション面だけでなく、物語としての完成度も高い。これが他のゲームとは決定的に一線を画している点だろう(まあそのせいでムービーがやたらと長いわけだが…)。

ちなみに、2ちゃんではMGSネタがよく使われる。どんなシチュエーションで使われるかというと、例えば、とあるミュージシャンのライブがあったとする。そのライブに参加している人は自分をスネークと名乗り現地から携帯で2ちゃんに情報を投稿する。で、そのスレッドを見ている人は大佐の役を担う。例えばXJAPANのライブであれば「こちらスネーク。開演から1時間経ってるのに、まだはじまんないぞ。どうなってるんだ!」とか「こちらスネーク。1曲目はラストソングだったぞ」とスネークの口調を真似て書き、上官は「何?まだ、はじまらないだと。了解した。新たな情報があれば直ぐ報告するように。くれぐれも隠密に頼むぞ!」みたいな大佐風のレスをする、というメタルギアごっこが繰り広げられる。これ、元ネタを知っていると結構楽しめる。

とまぁ、いろいろ書いたがMGS4は今週の木曜日発売。今頻繁に流れているMGS4のCMもいいね。「ゲームの逆襲がはじまる」というキャッチコピーとリアルなグラフィックの年老いたスネークからは、かなり神ゲーな予感がする。楽しみだ。

岡村靖幸のすすめ

岡村靖幸・全曲解説・総まとめ




YELLOW
yellow

1.Out of Blue★★★★★
記念すべきデビュー曲であり、ファーストアルバムの1曲目に収録。ライブではラストに歌われることが多い。岡村靖幸を語る上で最重要の曲のひとつといえる。シンガーソングライターというのは往々にしてファーストアルバムの1曲目には思い入れの深い曲を収録する傾向にあるようだが、岡村靖幸もその一人らしい。静寂で繊細なストリングスと情熱的なカッティングが見事に融合した名曲。歌詞は全体的に病んでいる。この曲を聴いていると、「まだ人通りが少なく埃の舞い上がっていない清潔な早朝に神経質な岡村靖幸があらゆる悩みを抱えながら歩いている」というようなイメージが浮かぶ。どの歌詞を取っても内省的で消え入りそうに儚い。しかしサビで何度も繰り返される「もし君が泣いてたなら I give you my love  今すぐに君のもとへI give you my love」というフレーズからは、まだ外の世界に目が向けられており、人との関わりを求めている様子が伺えるのが唯一の救いだろうか。

2.Young oh! oh!★★★★
「タンタンタン」と威勢のよいドラムからはじまる元気一杯なファンクネスなダンスチューン。タイトル通り若さが炸裂したアゲうた。高揚感が得られ、明るくなれる曲だ。曲の終盤にはテンポが突然速くなるという曲構成になっているのだが、この部分をたまたまレコーディングスタジオで耳にした小室哲哉(当時は同じレコード会社に所属していた)は「なんだこれは!」と衝撃を受けいち早く岡村靖幸の才能に気づいたという逸話がある(とかないとか)。

3.冷たくされても★★★
とても時代を感じるアレンジ。ライブでは全く歌われない曲だが、何気にメロディラインがキャッチー。カラオケでヒットしそうな曲調。「窓に石を投げて君を忘れてやるさ」なんて歌詞はまさに青春真っ盛りだ。当時22歳だったこともあるのか歌詞がまっすぐだ。この頃はまだ歪んでいないように思う(※作詞は岡村靖幸ではなく神沢礼江氏)


4.Check Out Love★★★
言葉遊びが巧みな曲。「友情なんか僕はほしくない ニュートンなんかの言葉じゃベイベ騙されない」とか。ニュートンって…。後に、ベンジョンソンを登場させるお方だからしょうがないか。ビジネスバージョンのCheck Out Loveを知った後に聴くと物足りなく感じる。どうしてもテンポが遅く聴こえる。ただシングルとしてリリースされただけあって、かなり凝った音作りがなされている。サビの高音の部分は少しだけプリンスっぽいし、そこそこ佳作。

5.はじめて★★★
歌いだしはピアノ伴奏オンリーの独唱でしっとりと歌い上げている。当たり前だが声がしっかりと出ている。ファルセットは一点の濁りなく透きとった声質だ。間奏は壮大なオーケストラが用意されていて、普通に良い曲。欠点は歌の部分が短いこと。約4分の曲なのに1分50秒あたりで歌は終了。残りの半分以上の時間は延々と壮大なオーケストラが流れている。なぜ2番を作らなかったのだろうか。

6.Water Bed★★
最近ではライブDVD「シンポジウム」でアジャパイ風にアレンジされ原曲とは全く違った形で披露された曲。原曲はバラード並みにゆっくり且つねっとり。特筆すべき点は三つある。一つ目は、曲中に「語り」が収録されていること。二つ目はワンツースリーの後に「ファー」と叫んでいること。三つ目は終盤に岡村流アドリブ英語が披露されていること。これらはいずれも後の岡村靖幸の真骨頂となるもだ。「Water Bed」が初出となっているようだ。

7.RAIN★★
岡村靖幸の全楽曲のなかでも頭一つ抜けて異質な曲。珍しい曲調である。ゴシックロックあるいはファイナルファンタジーの城内で流れるBGMのような高貴な風景を想起させるサウンド。青空に白鳥がバサバサと華麗に飛び立っていくようなイメージ。まるでエヴァの碇シンジのように悩み自問自答している歌詞などもあり個人的にはアニメやゲームに採用されそうな曲に思う。

8.彼女はScience Teacher★★★★
「Young oh! oh!」と並び「yellow」におけるダンスチューンを飾る二大看板のひとつ。とにかく元気な曲。ズシズシとブラックなリズムを刻んでいる。この歌もライブでは全く歌われない。

9.White courage★★★★
「はじめて」と並び「yellow」におけるバラードを飾る二大看板のひとつ。ピアノ伴奏で熱唱している。この歌に限ったことではないが作曲能力が優れている。ものすごい心にしみる曲。何て言えばいいのだろうか…普通にいい歌だ。早い話が天才。



DATE
DATE

1.19★★★★★
「ダダダン ダダダン」という印象的なアンサンブルからはじまる、19。細かく刻んだアコギを中心に生楽器のリアルなグルーヴが味わえる。20年も前のアルバムだが、生演奏風だからか、古さが殆ど感じられない。「19」は2004年のライブDVD「Me-imi Tour 2004」でほぼ原曲通りのアレンジで演奏されたが、まったく古さを感じさせない出来となっていた。「ウォーターベッド」や「チェックアウトラブ」が大幅なリアレンジにより生まれ変わったことを考えると、「19」の色あせなさは脅威といえる。

2.Super Girl ★★★★★
「Super Girl 」の歌詞は80年代後半から90年代前半における岡村靖幸のパブリックイメージを象徴するかのような内容となっている。自分に見向きもしないスーパーガールという存在を立て「俺ほどの男はそうはいないはず~俺ならば本当に損は無いはずさ」という自信満々なナルシストぶり。「忘れないであのときのときめきを」という純真で汚れなのない、ある種モラトリアムのような心情を大事にしようというメッセージ。そして「本当のダンス・チャンス・ロマンスは自分しだいだぜ」というポジティブだがちょっと苦笑してしまいそうになるフレーズ。それらを突き抜けるように爽快なメロディに乗せて歌っている。まさに岡村ちゃん節炸裂だ。どんなミュージシャンでも歌を通して伝えたいメッセージのようなものが少なからずあると思うが、岡村靖幸の場合のそれは、「Super Girl」をに集約されているように思う(もちろん全てではないが)。
また、大人気アニメ・シティハンターのエンデンィグに採用された曲でもある。そのため、岡村靖幸の曲の中では認知度の高い曲だ。「だいすき」と並び岡村靖幸の代表曲の一つといえる。あの中川翔子もシティーハンターのサントラからSuper Girlを見つけ気に入り岡村靖幸を聴き始めるようになったようだ。

3.生徒会長★★★★
80年代風懐古的シンセがもっともフューチャーされた曲。チープだが小気味の良いビートにのせ、ノリノリで歌っているダンスチューン。ダンスチューンと言ってもダンスの舞台はクラブといよりディスコだろうか。終盤のスィングした盛り上がりは一聴の価値あり。。

4.Lion Heart ★★★
詩先風のメロディによるバラード。言葉の乗せ方がいかにも五線譜のおたまじゃくしを辿っているかのような印象を受ける。肝心の歌詞は「実はさ この僕も あの日から 傘さえも ひらけない」という非常にメタフォリカルあるいは独善的な内容となっている。スマップの「Lion Heart」と同じタイトルだが全く関係ない。

5.いじわる ★★★★★
岡村靖幸が和製プリンスと呼ばれる所以はこの曲にある。超ファンク曲。しっかり忠実に日本語でファンクをやっている。数少ないジャパニーズファンクにおける金字塔でありひとつの到達点といえる。他の追随を許さないドロドロ&エロエロなファンクネス・「いじわる」を礎とする岡村流ファンクは、90年代以降、ファンクで勝負しようとする奇特なミュージシャンたちにより揺ぎ無い信望を得ている。「ファンクって何?」という方はこの曲を聴けば誰でも直ぐに理解できるだろう。笑っちゃうくらいプリンスなのはご愛嬌だが、ここまで岡村流に咀嚼し再構築する術は、才能が無ければ不可能だろう。後奏の語りは「家庭教師」と双璧をなすほどの変態ぶりを発揮している。どんな「語り」をしているのかを知りたい人は実際に聴いてみよう。

6.DATE ★★★
アルバムタイトルと同名曲。流麗なストリングスを背景に、今にも泣き出しそうな心持枯れた声での語りからはじまる(また語りである)。残念な点は歌い方だ。変なのだ。声の出し方が(わざとそうしているのだろうが)異質だ。すりつぶしたような声だ。終盤は剛毅さを感じる威圧感のあるスラッピングも加わり演奏のテンションはどんどんと高まっていくのだが、唐突にブッツリと終わる。この終わり方はXJAPANのアンフィニッシュドと同じくらい違和感がある。

7.どうかしてるよ ★★★
ピアノとアコースティックギターのみのシンプルな演奏によるバラード。「Super Girl」が岡村靖幸の表向きなパブリックイメージを象徴する内容だと書いたが、「どうかしてるよ」は裏側の顔を象徴した曲といえる。好きな異性に対し行動を起こせない自分に嫌気が差し一人で鬱々としているといった内容の歌詞をマイナー調で歌っているとても暗い曲。
過去に何度かインタビューで発言しているように岡村靖幸は「どんなに酔っていようが絶対に自分から告白できない」という損な性分なのだ。そのため夜な夜な「うじうじ」しているという。軟派でバブリーな遊び人風のパブリックイメージとは対極にある性格だ。あまりにも恋愛に対して消極的なため、89年のロッキンオン20000字インタビューでは以下のようなやりとりがあるほどだ。
●まさか、童貞じゃないでしょうね?
岡「よく言われるよ、童貞じゃないですかって。ファンの子たちもね、『岡村君はエッチなこと一杯歌ってるけど、実は童貞じゃないかとニラんでます』とか書いてくる」
●その憶測は外れてるんですか。
岡「いやぁ、外れてると思うけどね」
●「思う」ってどういうことだよ(笑)。

8.うちあわせ ★★★
暗い曲の後は、拍子抜けするほどポップなアップチューン。男女の痴話ケンカを「愛の摩擦問題」とか「君がロシアで ぼくがたぶんアメリカ」とか「恋の平和条約」など国際問題に例えて歌っている。

9.不良少女 ★★★
ブラスバン調の細かいドラミングと行進曲を想起させる笛のイントロではじまるこの曲はタイトルからもわかるように、かなり80年代を感じさせる曲。岡村靖幸らしからぬ凡庸なメロディが逆に新鮮。「こんな曲も作れるのか」みたいな。爽やかで癖の無いまるでアイドルが歌うような曲調。岡村靖幸のドロドロとしたファンクは影を潜めている。不良少女とは当時の時代から想像するに、いわゆるスカートの丈を引きずるように歩く硬派なスケバンのことだろう。いまや絶滅した人種だ。そんな不良少女に対して全面的に理解を示している心情が歌われている。

10.イケナイコトカイ ★★★★★
DATEに収録されているバラードは「Lion Heart」と「どうかしてるよ」、そして「イケナイコトカイ」の3曲なのだが、「イケナイコトカイ」は別格だ。群を抜いて名曲。「カルアミルク」「友人のふり」とならび岡村靖幸の三大バラードのひとつ(「三大バラード」というのは僕が勝手に名づけたものである。別に岡村靖幸ファンの間で市民権を得ている言葉ではない)。乾いたドラム、究極的に切ないストリングス、フレキシブルなファルセットと地声を搾り出すように情熱的な歌唱。邦楽ではこれほどまでスケールが大きいソウルバラードはなかなかない。

11.19才の秘かな欲望 ★★★
渡辺美里に提供した楽曲のカバー。曲の最初と最後は、スタジアムに響き渡る歓声のSEが挿入されている。系統としては「彼女はScience Teacher」のような曲。歌詞を担当しているのは岡村靖幸ではなく、有賀啓雄という人。その筋では結構有名なお方のようだ。 イケナイコトカイで終わりにした方がコンセプトアルバムとしての統一感が増したように思う。



靖幸
靖幸

1.vegetable★★★★
「ハッハッハッ」という犬の息づかいを真似た声が効果音のように全編にわたり挿入されている陽気なナンバー。リズム楽器としてのサクスフォーン、アコギ、ピアノは軽快であり爽快。オープニングを飾るにふさわしい曲だが体調の悪い日に聴いたらやや騒がしく思われるかもしれない。王子様だった頃の小沢健二が作りそうな曲だ。オザケンの名盤である「LIFE」の5曲目あたりに「vegetable」が紛れ込んでいても違和感は無いだろう。ちなみにライブDVD「シンポジウム」では同曲の最中、客席に向かって野菜を投げ込むという珍パファーマンスが見られる。

2.ラブ タンバリン★★★★★
「愛しちゃったんだろ 告白しろよ 男は毎日がバレンタインデーだぜ」といった内容の歌。個人的にこの曲は岡村靖幸の全曲のなかでもベスト3に入るほど好きだ。これぞキラーチューン。基本的には、明るい曲なのだが背景に流れるストリングスには刹那的な哀愁が漂っている。その一方暖色のような温かみも感じられ、心地の良い気分に浸れる。他の曲と比べると歌い方のニュアンスが微妙に違う。穏やかで包み込むような優しさに満ちたヴォーカリゼーションだ。名曲の割にはライブではあまり歌われないのが残念。

3.どんなことして欲しいの僕に★★★
プリンスのエッセンスが散りばめられた曲はたくさんあるが、この曲ほど「プリンスっぽい」が当てはまる楽曲はないのではないか。曲中の「語り」以外はすべてファルセットで歌っている。「家庭教師」と並び変態度の高い曲。周りに人がいるときはイヤホンが必須だろう。「君のパンツの中でバタフライをしたいよ(以下自粛)」は岡村靖幸の性的倒錯の極致といえよう。友達が集まった部屋でこの曲を流したら、「語り」の部分や喘ぎの箇所で笑いが起こるだろう。でも(ここが肝心なポイントなのだが)岡村靖幸はこの歌で笑いを狙っているわけではい。本気に真面目に純真に歌っているのだ。ここがミソ。

4.友人のふり★★★★★
「イケナイコトカイ」「カルアミルク」と並び岡村靖幸三大バラードのひとつである「友人のふり」。ノスタルジックでまるで直接的に涙腺に訴えかけてくるような泣きイントロが秀逸。想像力を豊かにすればタイトルからも察しがつくかもしれないが、身につまされるほどせつない歌詞だ。「あんまりモテなかった方だし 臆病で正直じゃないから~」という歌詞にはかなりグッとくるものがある。こんな歌詞が書ける時点で相当正直者だと思う。

5.聖書-バイブル-★★★★★
中年親父に恋するクラスメートの女の子に向かい一方的に「そんなの汚れてる 僕のほうがいいじゃないか」とアプローチを送るといった内容の歌詞をダークで濃厚なソウルフィーリングで歌い上げた岡村靖幸を代表するファンクナンバー。「中年親父よりも僕のほうがいいじゃないか」という設定は「俺ほどの男はそうはないはずさ」と歌う「スーパーガール」と根本的に同じだ。ただスーパーガールの爽やかさと比べると聖書は卑屈で陰鬱な印象がある。
始まりからして不穏だ。まず、ゴーンゴーンという鐘の轟々しい音が鳴り、馬の走り去る蹄の音が響き、まるでナポレオン戦争やフランス革命などのいわゆる18世紀の西洋を想起させる演奏から始まる。そんな、怪しげな音楽をバックに岡村靖幸の「語り」がスタート。相変らず変体チックな語りだ。突っ込み所満載だ。特に「君は僕のこと好きだって言うけどさ どうして? 背が高いから?曲を作るから?歌を歌うから?踊りが上手だから? ……やめろ!!」は傑作。質問という形式を用いて自画自賛するという一般人には到底恥ずかしくてできないであろう超展開。
「岡村ちゃんラブ」を公言する、スガシカオは「語り」が終わった後のチョッパーの入りを大絶賛している。確かにベースのうなりに特徴がある。音の隙間を埋めるための機械的なベースではなく、メロディアスでインパクトのあるベースラインだ。曲の最初から最後まで、完成度の高い濃厚な世界観が構築されており、その重厚なトータリティは圧巻といえる。ちなみに、ミッチーも聖書を絶賛している。数年前にカバーし、その際は「好き過ぎて聴くのがもったいない曲」と、言葉の限りを尽くし賞賛している。また、近年はミイミ収録の「アチチチ」の後にメドレーで歌われることが多い。
 
6.だいすき★★★★★
正真正銘、岡村靖幸の代表曲。岡村靖幸といえば「だいすき」であり、「だいすき」といえば岡村靖幸である。代名詞だ。「だいすき」以外の殆どの曲は万人受けするタイプの曲調ではないが「だいすき」は限りなくキャッチーでありポップだ。口ずさみたくなるような歌メロ。「ねぇ 3週間ハネムーンのふりをして 旅に出よう」という甘美なアバンチュールを彷彿させる絶妙な歌詞。そのまま旅行会社のキャッチコピーに使えそうだ。幼稚園の教室から聞こえてきそうな子供のコーラスの可愛らしさ。最後には岡村靖幸と元気一杯の子供たちが謎の言葉「へぽたいや」でコールアンドレスポンスするという微笑ましい終わり方。子供から大人まで老若男女問わず親しめる王道ポップソング。

7.Co'mon★★★
スーパーマリオブラザーズの2面(地下のステージ)のBGMのようなベースラインが終始唸っている。プリンスのエッセンスにあふれるソウルファンクは聖書に匹敵するだろう。いくつもの楽器を自由自在に駆使し音楽で遊んでいる岡村ちゃんが目に浮かぶようだ。1分45秒と短い曲。

8.Boys★★
「Co'mon」からのメドレーではじまる「Boys」。「コンコンコン」「ズバッパ」「ドゥンドゥン」などそれぞれ独立したボイスパーカッションがひとつの規則性の下、まとまっているというギミックが施されている。面白い試みだとは思うがやや実験的であり個人的にはあまり好みではない。「夕べ見たのさ 電車の中で漫画を読む親父くらいの人 ダサイんじゃないのかな」と漫画を読む大人を否定するかのような歌詞がある。しかし、本作から10年以上経て発表された「アチチチ」という曲中には「漫画読んだっていいんだ」という歌詞がある。
あとこの曲にもやはり「語り」がある。岡村靖幸の「語り」がある曲のなかで唯一まともな「語り」だ。つまりはエロ系の変体語りではないのだ。自分と同世代の若者に向かい「何をするでも便利な世の中は素晴らし。周りはどんどん素晴らしくなっていくけど自分自身はどうなの?裸の自分は素晴らしい?僕らは子供が育てられるような大人になれるのかなぁ」というような社会派な「語り」が聴ける。20代前半の頃の岡村靖幸が抱いていた率直な疑問だったのだろうか。残念ながら現在40代前半の岡村靖幸は(少なくとも今のところ)「子供が育てられるような大人」にはなれていないようだが…。

9.愛してくれない★★★
「どんなことして欲しいの僕に」程ではないがファルセットが多用されているため今の岡村靖幸には歌えない曲のひとつだろう。「Boys」にも言えることだが、この曲は20代前半の感性だからこそ作れた曲だと思う。曲の最後には電車がガッタンガッタン走り抜けるSEが入っている。これはビーチボーイズのペットサウンズのラストと同じだ。もしや、BB5を敬愛する山下達郎つながりなのでは?と睨んでいるのだが、真相は不明。正直印象の薄い曲だが、実は隠れた名曲。

10.punch↑★★★★
Pファンク風のファンクミュージック。サクスフォーンの跳ねた鳴りやビートの利いたリズムは邦楽の範囲外だ。「Good God(グッゴ)」の叫びが何よりも黒人音楽への敬愛の意に感じられる。3分18秒に明らかにプリンスの声帯模写と思われる声を発している。どんだけプリンスが好きなんだろうか。「ステップUP↑」「いじわる」「聖書」と並び岡村靖幸の代表的なファンクナンバーのひとつ。

11.バスケットボール★★★
ラストを飾る「バスケットボール」はタイトルだけ見ると「あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう」と双子関係のように思えなくもないが全然違う。バスケットが連想されるような歌詞は一つも出てこない。「何をすればいいのか 何を見ればいいのか こんな気持ち君だけはちょっとわかって」という尾崎豊っぽい青臭い歌詞を、DATE収録の「不良少女」のような爽やかでありながらどこか寂しげな曲調に乗せて歌っている。
ちなみのこの曲は2006年に山下達郎のラジオ番組「Sunday Song Book」で紹介された。昔、山下達郎は知り合いを介して岡村靖幸に音の素材を借したことがあったらしい。後日お礼として岡村靖幸から手紙と菓子折りが山下達郎のもとに届いたという。達郎は非常に礼儀正しい人だと思ったとのこと。山下達郎が数ある名曲の中から割りと目立たない「バスケットボール」を選び紹介したことから箔のついた曲といえる。



早熟
早熟

Peach Time★★★★
キャッチーなんてもんじゃねーぞ、ってくらいキャッチーなアイキャッチ風イントロからはじまるピーチタイムは3分程度の短い曲だが強烈なインパクトを有した名曲。終始、突き抜けた陽気さに満ちており、アトラクションのようなワクワク感が味わえるサウンドは病みつきになること受けあい。言葉の乗せ方は桑田佳祐並にユニークであり、一見、意味不明な歌詞も実際に歌ってみると歯切れのよいメロディの乗せ方になっている。特に「姉貴が言うにゃ食事はニューオリンズ」のフレーズは何回歌っても楽しくなれるし、飽きない。こんなに素敵で小気味の良い韻を踏んだメロディはそうはないだろう。そして、それを上回るほどの名フレーズはサビの「なんでぼくらが生まれたのか ぜったいきっと 女の子なら知ってる」。恐れ入るほどの、岡村ちゃん節である。哲学なのかオフザケなのか。浅いのか深い歌詞なのか。まったく検討の仕様のない歌詞だ。しかし、得体の知れない勇気がみなぎってくるから不思議だ。ネガティヴな気持ちの時に聴くと――絶対きっと――気分が晴れるだろう。それにしても、「生まれてきた理由を女の子なら知ってる」って、岡村靖幸にとって女の子とは何なのだろうか。どれほど高みに存在しているのだろうか。生まれてきた理由を知っているだなんて、まるで神様である。

Dog Days★★★★★
焦燥感を煽るような刹那的なアコースティックギターが終始鳴っており、どこか現実離れした世界観が広がるサウンドが幻想的。タイトルの「Dog Days」とは盛夏(夏のもっとも熱い時期)という意味であり、故にサマーソングである。夏の暑い日に歴史に残る勇気を振り絞って告白するもあっさりフラれ、お前のせいで俺は堕落してしまうぜベイベー、といった内容の青春の歌である。盛夏と青春が見事にマッチしていて、聴いているとジリジリと暑い夏の記憶が思い起こされるようだ。また、岡村靖幸の楽曲のなかでも上位に位置するほど歌詞が秀逸だ。特に「液体状の夕焼け 流れ落ちてきてる 僕のベッドに」なんて歌詞は優れている。聴き手の脳内にまるで印象派の絵画のように風景を思い描かせる絶妙な歌詞だと思う。ちなみにサビの「お前のせいだぜ」という歌詞のモチーフは吉川晃司らしい。また、「友人のふり」や「ライオンハート」の歌詞に出てくる「アイツ」というのも吉川晃司らしい。どうやら、岡村靖幸は吉川晃司を恋敵に想定するといい歌詞(主に情けない片思いを題材にした歌詞)が浮かんでくるようだ。

シャイニング(君がスキだよ)★★★
爽やかなエレキのリフと力強いドラムが印象的な屈託のないロックンロールナンバー。真っ直ぐでロック調なサウンドとポジティブで初々しく健全な歌詞が、逆に気持ち悪い。なんか万人受けしそうで怖い。やっぱり、岡村靖幸は「家庭教師」や「どんなことして欲しいのぼくに」みたいに変態な曲の方がしっくりくる。気持ち悪いエロ系の「語り」があってこそ岡村靖幸なのだ。そういう意味で「シャイニング(君がスキだよ) 」は平凡だ。「君の夢なら そうさ すべてを叶えてあげたい」なんて歌詞はジャニーズに歌わせておけばよいではないか。「シャイニング(君がスキだよ) 」は、大衆性は高いがそれ故に、岡村作品においては異色作といえるかもしれない。

Lion Heart(ハリウッド・ヴァージョン)★★★
セカンドアルバム「DATE」に収録されている「Lion Heart」のリアレンジ。その名も「ハリウッド・ヴァージョン」。なぜハリウッドなのかは聴けばすぐに理解できる。とにかく音飾が派手で華やかで豪華なのだ。初っ端から押し付けがましいほどのストリングスが展開されている。しかし押し付けがましいのは最初だけで、間奏のアレンジはこちらの方が合っているように思う。
曲調は詩先風のメロディによるバラード。言葉の乗せ方がいかにも五線譜のおたまじゃくしを辿っているかのような印象を受ける。肝心の歌詞は「実はさ この僕も あの日から 傘さえも ひらけない」という非常にメタフォリカルあるいは独善的な内容となっている。スマップの「Lion Heart」と同じタイトルだが全く関係ない。

Peach Time(修学旅行ミックス)★★
「Peach Time」のリミックス。一応ボーカル付きだが所々インストになっている。遊び心満載のアレンジが施されており、楽しい。最後の方は「だいすき」「アウトオブブルー」など、いろんな曲が次々にまるでフラッシュバックのように挿入されており、ベストアルバムのラストに相応しい出来となっている。個人的には全く聴かない曲である。



家庭教師
家庭教師

1.どぉなっちゃってんだよ★★★★★
オープニングからガツンとくる衝撃的なファンクナンバー。爪弾くように弾き出された威勢の良いエレキとファンク色の濃厚なリズムが見事にかみ合ったサウンドは病み付きになること間違いなし。圧縮されたテンションの高いイントロだけでこのアルバムの底の知れない傑作ぶりの片鱗が伺える気がする。そして歌いだしの第一声「ヘップバラ(Hey everybody)」で完全に心が捉えられる。ややヒップホップ調のメロディラインにひと癖もふた癖もある言葉を乗せて歌っている。まるでヴィジュアル系のようにねっとりと歌う歌唱は前作の「靖幸」よりも格段にパワーアップしている。

「どぉなっちゃってんだよ 人生がんばってんだよ 一生懸命って素敵そうじゃん」
サビのフレーズだ。聴いてると出所のわからない勇気がみなぎってくる。根拠の無い自信がみなぎってくる。個人的な解釈だが、このフレーズは会話形式になっているように思う。1990年頃の岡村靖幸といえば、その派手な風貌や変態チックなパフォーマンスにより世間からは色眼鏡で見られていたことだろう。つまり世間が岡村靖幸に対して抱いていた率直な感情が「(岡村靖幸って)どぉなっちゃってんだよ?」だったのではないか。そんな幾分偏見やら嘲笑やらが交じった問いかけに対しての岡村靖幸のアンサーが「人生がんばってんだよ 一生懸命って素敵そうじゃん」なのではないだろうか。そう思い聴くと「人生がんばってんだよ」の歌唱にやや怒りが感じられる。曲の終盤には「週刊誌が俺について書いてることは全部嘘だぜ」という台詞からも当時のファンや世間が作り上げた「軟派なチャラ男」としての岡村靖幸像は虚像であり、実際は純朴に人生を頑張っている、ということを言いたかったのではないか。ただ、人生をがんばる理由は「一生懸命がんばってる自分って素敵そうだから」という、あくまでもナルシスティックな動機であり、微笑ましい。

他にも名フレーズがたくさんある。代表的なのはサビの終わりに、まるでお笑いのネタのブリッジに使われそうなメロディで歌われる「ベランダ立って胸を張れ」と「無難なロックじゃ楽しくない」の二つ。ベランダで胸を張っても今ひとつきまらないし、客観的に見ればなんだかおかしいが妙な説得力がある。ベランダ立って胸を張れば何かが変わりそうな気すらしてしまうから不思議だ。
「どぉなっちゃってんだよ」はシングルでリリースされた曲のため、PVが制作されている。これが、かなりカオスな出来栄えとなっている。金髪美女やBボーイ系の黒人の若者と岡村靖幸が共演している。せっかく容姿端麗な外国人と共演しているのだから、キメキメのダンスを一緒に踊ったりして、格好良いPVにすればいいのに、なぜかプロレス技の張り手(?)のような変な動作(まるでセクシーコマンドだ)を黒人ダンサーと一緒にやっている。

「靖幸」までの作風はプリンスからの影響が随所に見られたが、「どぉなっちゃってんだよ」からはファンクナンバーでありながらプリンスの気配がだいぶ薄れている。ついに岡村靖幸は「家庭教師」という絶世のマスターピースのオープニングナンバー「どうなっちゃってんだよ」において、完全無欠のオリジナルを修得したといえよう。

2.カルアミルク★★★★★
岡村靖幸の三大バラードといえば「イケナイコトカイ」「友人のふり」そして「カルアミルク」だ。「カルアミルク」は三大バラードのなかで一番認知度が高く、万人受けする曲といえる。多くのミュージシャンにカバーされており、最近は、Bank Bandの桜井和寿がカバーしたことでも有名。

どこか屈折していたり、変態っぽかったり、いい大人なのに学生時代の青春模様を題材にした曲が多かったり、何かと大衆性の低い歌をメインに歌ってきた岡村靖幸だが、「カルアミルク」はストレートに恋愛の歌だ。恋愛、それは「人類最大の関心ごと」と称されるように、やはり普遍的な需要があるのだろうか。「恋人と喧嘩した後いろいろと思い出に浸っていたら仲直りしたくなり、今俺六本木にいるからおいでよ。カルアミルクで仲直りしよう」という内容の歌詞をセンシティブな演奏に乗せて歌っている。「六本木」という固有名詞が印象的なアクセントとして使われている。当時、岡村靖幸は親友だった尾崎豊と吉川晃司の三人で六本木に繰り出し夜な夜な飲みに行っていたそうだ。そんな背景を頭に入れて聴くとさらに切なくなること間違いなし。

また「カルアミルク」は歌詞がわかりやすい。隠喩も独善的な言葉使いも無い。「ラブタンバリン」の「心に住んでる修学旅行が育つんだ」とか「ライオンハート」の「あの日から傘さえも開けない」など難解な歌詞がひとつもない。歌詞の意味に他意がない。故にそのままの意味をそのまま受け取ればいいのだ。普通はそれが当たり前なのだけど岡村靖幸の書く歌詞にしては非常に珍しいといえる。
カルアミルクを聴く度にいつも「もっとこういう曲を作ってくれよ」と思う。しかし脂が乗っていた全盛期だからこそ作れた曲なのだろう。岡村靖幸にはストック曲が80曲以上あるらしいがそのなかに「カルアミルク」を超える曲はいったい何曲あるのだろうか。

3.(E)na ★★★★★
楽器編成がとても賑やかで音の密度が高い。多種にわたるパーカションが隙間なく鳴っておりヘッドフォンを装着し耳を澄ますと数え切れないほどの楽器が潜んでいるように感じる。サウンドは重厚でまさに「ウォール・オブ・サウンド」と化している。サウンドの向こう側が透けて見えることは決して無いだろう。サックスは唸り、シンセは素っ頓狂に鳴り、今となってはユニークな電子ドラムが響き…さまざまな楽器が渾然一体となっている。やや喧騒を感じないでもないが、ギリギリの線で不協和音にはなっていない所はさすが。それぞれの楽器は有機的にまとまり一体感がある。明確な意思を持ったサウンドの塊として生き生きとしている。岡村靖幸のアレンジメントの貪欲さに脱帽する。

「(E)na」といえば特筆すべきはPVだろう。岡村靖幸の全PVのなかでもずば抜けて出来が良い。近年は、まるで山下達郎ばりにPVに本人は出演しない。まるでイメージビデオだ(唯一「ミイミ」の初回特典版についてきた「ミラクルジャンプ」には本人も出演しているが)。「(E)na」のPVでは、もろバブリーな頃の岡村ちゃんが拝見できる。「ひとつ屋根の下」の時のあんちゃん(江口洋介)のようなロンゲで前髪がやや内巻きになっている。この髪型がいかにもバブリー。手抜きでお金のかかってなさそうな低予算のPVが殆どだが(大ヒット曲「だいすき」ですら、かなり手抜きだ)「(E)na」は明らかにそれ相応のお金のかかったセットが用意されている。ビーカーなど理科実験に使用されるような小道具からSM風のムチや衣装までちゃんと用意されている。そして、なによりも振り付けが施されている。バックダンサー二人と合わせてダンスをしているのだ。この秀逸なPVの影響もあり、ライブで「(E)na」の「ナーナカナーカナカ」というイントロが流れるとファンたちは、両手を挙げ手首を前後に振り振りする。岡村靖幸のライブでの数少ない「お決まり」である。

4.家庭教師 ★★★★★
ひと癖もふた癖もある名曲ばかりが収められた「家庭教師」。そんな異色な曲ばかりが集まったアルバムのなかでも、さらに頭ひとつ飛び越えて異色さを燦々と放っているのが、4曲目に収録されているタイトルチューン「家庭教師」。あらゆる意味合いにおいて、他を遥かに圧倒し凌駕した曲。この曲を聴かずして岡村靖幸は語れない。

アコースティックギターってこれほどまでに淫靡で怪しげで纏わりつくようにエロい音色が奏でられる楽器だったのか。卓越したギターテクニックが惜しみも無く披露されている。「靖幸」収録の「Boys」のように「しゅくぱーら」「んっんっんっ」「はぁはぁはぁ」という別録されたボイスパーカションが規則的に構築されひとつのリズムを形成している。これほどまでに淫靡なサウンドは「家庭教師」以外にはないだろう。

特別歌詞がエロいというわけではない。いや、エロいのだが、純粋にエロという点のみを見れば「どんなことをして欲しいの僕に」や「聖書」など他の曲にもたくさんある。「家庭教師」が別格な理由は、その構築された世界観そのものがエロいということ。その世界観においてはどんなに真面目な振る舞いであろうが、どんなに紳士な発言であろうが、どんなに礼儀正しい行いであろうが、エロくなってしまうのだ。その世界観のテリトリーのなかでは不可避の変換装置により淫靡になってしまう。「赤羽サンシャイン」も「村会議士」も「世界大恐慌」もそしてもちろん「家庭教師」というタイトルすらも淫靡に響くのだ。

「家庭教師」の凄味の所以は2分40秒にも渡る「語り」だろう。家庭教師以前にも岡村靖幸の曲に「語り」は多々ある。しかし、これほどまでに例外的に長い「語り」は家庭教師だけだ。6分の内2分40秒が「語り」。つまり約半分弱が「語り」ということになる。岡村靖幸が「性の家庭教師」として教え子のエリコちゃんに迫る模様の「語り」だ(なんか書いてて馬鹿らしくなってきたなぁ…)。そこで、いろいろと名言が多発している。なかでも僕のお気に入りは「お金を使わないで幸せになる方法」だ。もはや「性の啓蒙活動」である。
「ライブ家庭教師91」では「語り」の部分は演技気的要素の入った寸劇として披露されている。これは伝説!抱腹絶倒間違いなし!R1に出演したら2回戦は突破できるだろう。


5.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう ★★★★★
前曲のドロドロとした暗闇の室内から一転、突然太陽が燦々と降り注ぐ健康的な外界に放り出されたような爽やかなアコギが気持ちよく鳴っている。自分でも弾きたくなるようなキャッチーで空まで突き抜けるようなフレッシュなギターリフが印象的。タイトルからもわかるように青春真っ盛りの名曲。青春時代特有の刹那的な時間の流れを歌っている。まるでタイムリミットのように忙しなく刻まれるドラムに胸騒ぎを感じる。一番は、「あと15秒でバスケの試合が終わる瞬間」、2番は「あと15分で引越しし旅立つ瞬間」が歌われている。どちらも胸が締め付けられるような限られた時間のなかに存在している。時間の前では人間は無力であり抗うことはできない。そんな脱力感や焦燥感がうまく表現されている。

岡村靖幸は大人でありながら、学生時代の青春模様を歌った曲が多い。純真な岡村靖幸にとって学生時代を舞台にすることは必然的なのかもしれない。インタビューで何度か語っているように、「学生時代の恋愛には、仕事とか年収とか既婚者とかそういった類の「ものさし」がなく、打算的な駆け引きがない」から青春時代の歌が多いらしい。実際に学生時代を振り返ってみるとそれなりにしんどい出来事もあるが「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう(以下「あのロン」)」を筆頭に岡村靖幸の青春ソングを聴いていると自分の青春時代ですら煌くようにキラキラして見えて来るから不思議だ。

「あのロン」で注目される歌詞に「寂しくて悲しくてつらいことばかりならば あきらめてかまわない だいじなことはそんなじゃない」という歌詞がある。岡村靖幸の全ての曲の中で最も名フレーズとして話題に上る歌詞だろう。このフレーズは、別に難解な言葉を使っているわけじゃないし、隠喩表現もない。小学生低学年にも通じる簡単な言葉だ。その割にはファンの間で解釈がバラバラになっているのが面白い。

この歌詞の良い所は「あきらめ=逃げ」みたいなマイネスの固定概念に縛られてない所だろう。少年漫画や学校教育において、あきらめることは、まるで道徳に反するかのような行為とされている。しかし、リアルの世界ではそんな悠長なことばかりは言ってられない。限られた人生のなかのさらに限られた青春時代ではなおさらだ。寂しくて悲しくてつらいことばかりだったらあきらめて構わない…当たり前のことだ。この歌詞はネガティブに曲解することもできるが、真意はポジティブな意味が込められた歌詞だと思う。
ちなみに、カラオケで「あのロン」を歌うと意外と間奏が長く歌うところが少ない。大きい割に身の少ない魚のようだ。

6.祈りの季節 ★★★★
大人の雰囲気がぷんぷんと漂うジャジーなサウンドにアレンジメントされた演奏に乗せ、ねっとりとした声で歌っている。ほんとこれ以上ないくらいにねっとりと…。間奏のムーディなサクソフォーンは薄暗い会員制高級クラブとかで流れていそう。そんな大人な音に乗せて歌っている内容はずばり少子高齢化について。やや、矛盾や安易な結論付けが目立つが「老人ばっかじゃBaby バスケットもロックも選手がいなくなってオリンピックに出られない」とか、面白いから良しとしよう。

7.ビスケットlove ★★★★
「祈りの季節」からのムーディな余韻を残したままメドレーではじまる「ビスケットlove」。「だいすき」で効果的に使用された子供のコーラスが今回も良いアクセントとして使われている。それにより、幾分明るめの曲調になっている。しかし、その明るさは陽気なものではなく、どこか退廃的に感じられる。全体的にけだるい。リベラルな性の匂いがぷんぷんと漂っている感じ。そんなかったるい雰囲気と無邪気な子供の「すごーいすごーい」という声のギャップが言い得もせぬ折衷的な世界観を形成し、中毒性を高めている。

曲終わりには微妙に節のついた「語り」がある。自身の理想と思しき恋愛感やデートプランが語られている。曰く「一緒に映画見に行ってその映画について後でスッペイン料理屋で語り合ったり真夜中にマンションの屋上で花火したりとか」というシチュエーションが理想みたいだ。個人的にはこの「語り」を聴くとドラマ「ロングバケーション」を思い出す。

8.ステップUP↑★★★★★
アップテンポなファンクナンバー。アフリカの民俗音楽のようにリズミカルでシンプルな太鼓が鳴り、ビッグバンドのように迫力のある「ダーダ ダダダダン」というアンサンブルが被さり、「イーヤッホー」と声帯がえぐれるようなジェームズブラウン風のソウルフルなシャウトが響き渡る。これほどまでにハイになれるイントロはそうはない。これを聴いて何も感じない人が居るのだろうか。居たら不感症なのではないか。高揚感が得られるという点に置いては最高のイントロだ。ライブではこのイントロが流れるだけで会場は瞬間湯沸かし器のように興奮の坩堝と化す。夏フェスでは立てノリになる。

曲自体も型にはまったものでなく後半に新たな展開に突入する。いわゆるAメロやサビなどの定型から逸したリズムに入りカオスと化した岡村ちゃんワールドが広がる。意味不明な岡村ちゃんの叫び(「一人ぼっちじゃボバンボン二人じゃなくちゃババンボン」)と叫べば、どこから沸いて出てきたのか、無骨な野郎のレスポンスが入ったり、岡村ちゃんの語りを被うように早送りにサンプリングされた音声が流れたり。もう、いろんなものが渾然一体となっている。

9.ペンション ★★★★★
90年代を代表するマスターピース「家庭教師」のラストを飾る曲はバラード。ナイーブで刹那的なピアノ。決してキャッチーとはいえないが流麗なメロディライン。神経質な文学青年のように凡庸な自己に向けられた自虐的な怒りが表現されている。ラストに相応しい美しい曲。
やや突っ込み所の多い内容の歌詞が目立つ。特に「平凡な自分が本当は悲しい」という歌詞。…平凡なわけがないだろ。最後は岡村流のソウルフルなアドリブ英語で終わる。

三大バラードに入れても良いほどの名曲なのだが、やはりペンションは「家庭教師」というアルバムのラストに在ってこそ魅力的に輝く曲だと思う。「どぉなっちゃってんだよ」から「ステップUP↑」まで聴いた後に最終曲として聴くべき曲だ。「ペンション」が終わりアルバム全曲を再生し終わったことを告げるCDプレイヤーの機械音も含めて「ペンション」だ。「ペンション」は終幕でなければいけない。そういう意味では「ペンション」には単体(シングル)としての資質は低い。「カルアミルク」「イケナイコトカイ」「友人のふり」のように曲単体が一人歩きしていくような強味はない。「家庭教師」の最終曲としてしか生息出来ないのだ。それくらい儚く脆弱で、まるでカタストロフのような存在なのだ。しかし「ペンション」の有する宿命的な脆弱さに我々は強く惹かれるのである。



禁じられた生きがい
禁じられた生きがい

1.あばれ太鼓 ★★★
岡村靖幸のオリジナルアルバムにおいて唯一のインスト。リズムを刻んだような扇情的なボイスパーカッションに自らの演奏と思われるギターがキャッチーなリフをかき鳴らしている。臨場感のある気迫のこもった演奏をベースに、和のテイストが感じられる和太鼓やホイッスルの音が効果的に使用されている。終盤になるにつれ曲調がやや変わり「ハァーハァー」というまったりとしたコーラスが絡み趣がけだるくなる。最後は笛が「ピッピー」と鳴り実質1曲目の「青年14歳」へ。

2.青年14歳 ★★★★★
「あばれ太鼓」からのメドレーではじまる実質1曲目の「青年14歳」。初っ端からカオスな楽曲だ。ドスの利いたサクソフォンに、ドスの利いたボーカル。密度が異様に高く圧縮されたような怒涛のリズムセクション。あらゆるアイデアを一曲に半ば無理やり詰め込んだような、豪華絢爛なアレンジメント。テンションは極限まで張り詰めており、この1曲だけで既にお腹一杯になるほどだ。「禁じられた生きがい」の特徴のひとつでもあるが歌詞が支離滅裂だ。歌詞カードがなければ殆ど聴き取れないだろう。歌詞の意味よりも言葉の持つ語感を大切にしたのか、あるいは岡村靖幸なりにメッセージが込められているのか、聴き手には判断がつかない。しかし、意味不明な歌詞と独特なメロディーラインは不思議なことに有機的に交じり合い、リズム楽器の一部と化したボーカルとして気持ちよく響いている。こんな曲、岡村靖幸以外には作れないだろう。ちなみに、スガシカオは「青年14歳」を絶賛している。

3.クロロフィル・ラヴ ★★★
地面から3ミリほど浮いているような錯覚に陥るほど浮遊感が漂う不思議な曲。立体感のあるサウンドと本アルバムにおいて最も支離滅裂と思われる歌詞が融合している。どこに向かおうとしているのか、方向性が定まっていない印象を受ける。正直、よくわからない曲だ…こんなこと言ったら身も蓋もないか。

4.ターザン・ボーイ ★★★★★
ややロック調のハートフルなミディアムナンバー。4曲目にしてやっと一般受けしそうな曲。AメロがあってBメロがあってサビにはキャッチーなメロディが用意されている。アレンジはあっさりしており技巧をひけらかすような小難しさはない。歌詞もわかりやすい。少年時代のノスタルジックな風景を回想している。そしてサビの終わりで歌われる「君のためにライオンと戦える男でいたい」という歌詞は個人的に本アルバムのなかで最も傑作な名フレーズだと信じて疑わない。男なら誰もが一度は思うであろう感情を実に簡潔且つ的確な言葉で表現しているように思う。

5.妻になってよ ★★★
エコーが強めにかかったヴォーカルが幻想的なスローバラード。臨場感のあるストリングスを背景に流麗な旋律を辿る甘美なファルセットが圧倒的。曲やアレンジメントは洗練されており他を寄せ付けない厳粛さに満ちているのだが、歌詞がちょっと変というか道理に反しているというか…。冒頭の歌詞が「20代のまんなかじゃ 手軽な恋が出来ない 妻になってよ 別れたわかったんだ」。妻になって欲しい理由が「君と別れてみたものの、手軽な恋が出来ないから」なのか。根本的に考え方が間違ってるような。そう考えてみるとタイトルの「妻になってよ」からして心持可笑しい。妻って。

6.パラシュート☆ガール ★★★★
岡村靖幸の真骨頂である学園生活を舞台にした王道青春ソング。子供の可愛らしい「スリ フォー」のカウントからはじまるポップなイントロ。曲調はメジャーで元気一杯な曲なのだが扱っている題材は「登校拒否」について。歌詞の概要は、天真爛漫でガッツポーズしたりする元気な女の子が突然学校に来なくなる。その女の子に向かい「君の弁当食べなきゃ部活でも頑張れない」「みんなエンジンかけろあの娘を探せカムバックベイベー」と言い励ます。しかしその女の子(CHARA)に「馬鹿な勉強できない子はあてにしない」と相手にしてもらえない。それでもめげずに励ましの言葉を送り続ける健気な岡村ちゃん、といった感じの青春の歌。岡村靖幸が登校拒否の女の子を勇気づけるというシチュエーションが微笑ましい。岡村靖幸は青春ソングが多いが中でもこの曲は秀逸だ。

7.どぉしたらいいんだろう ★★★
「(E)na 」のPVに使用された音源を発展させカラフルに肉付したファンクナンバー。相変らず支離滅裂な歌詞が続いている。リズミカルなメロディの前後に律儀に配された歪んだエレキのリフがやけに耳に残る。東南アジアあたりの蛇使いが奏でるような間奏があったりと、カオスタイムも健在。曲の終盤には3thアルバム「靖幸」に収録されている「Punch↑」から冒頭の台詞(「天才かもしれないけど絶対友達には~」)を流用していたり、4thアルバム「家庭教師」のオープニングナンバーに呼応したかのようなタイトルだったり。岡村靖幸の曲をある程度把握している人が聴けば一聴しただけでクロスオーバー的な〝遊び〟が施されていることに気づくだろう。

8.Peach X'mas ★★★
NHKで放送されたクリスマススペシャル番組のために作られたバラード。岡村靖幸の全楽曲においてこれほどまでに明確な季節ものの歌は「Peach X'mas」だけだろう。NHKに感謝したい。多くのクリスマスソングにおいて様式化されている、鐘や鈴の音、ゴスペル風のコーラス、12月月下旬の賑やかに華やいだ街の風景を描いた歌詞、がクリスマスムードを演出している。しかし、そこら辺の当たり障りのないクリスマスソングとは違う。オケだけ聴けば正当な王道クリスマスソングだが、詩の内容は個人的な思いのたけが歌われている。いわゆる岡村ちゃん節だ。「来年の作戦考えようぜ」という屈指の名フレーズは年末になると岡村ファンの間で交わされる言葉でもある。

9.チャーム ポイント ★★★★
疾走感溢れるビートが小気味の良いハードナンバー。全力疾走で駆け抜けていくように直進して行ったかと思えば急にゆっくりとメロウに転調したりと、何かと忙しい展開が繰り広げられる曲。テンポは速いがリズムセクションにしっかりとした安定感があり乱調になっていない。歌詞は90年代前半の風潮への懐疑的な当惑に満ちており、いろんな問題を自分の中で必要以上に複雑にこじらせている印象を受ける。月刊カドカワのインタビューで「チャームポイントはめちゃくちゃ自信作」と話したことからも「禁じられた生きがい」において岡村靖幸が最も表現し、伝えたかった想いを具現化した曲といえよう。



OH!ベスト
OH!ベスト

ハレンチ(Thank you Takabashi-MIX)★★★★
96年にリリースされた「ハレンチ」は、当時話題になっていた女子高生とおっさんによる援助交際について岡村靖幸なりの視点で切り込んだ意欲作。社会問題についての楽曲のため、当時は社会派と呼ばれていたとか。援助交際をやっている人たちに対して批判や更生を促す歌ではなく、援助交際という汚れた行為に思いを馳せ、ひたすらコンフューズ(混乱)する岡村靖幸自身の複雑な心持が歌われている。なぜそんな行為に走ってしまうのかを嘆いた歌であり、そういう意味では社会派ではない。「なぜ?」という感情を表現した歌だ。しかしそれ故、強烈なインパクトがある。援助交際をやっている人に向かって「もっと自分を大切にしよう。お金はちゃんと働いて稼ごう」など当たり障りの無い一般論で諭すより、「ハレンチ」で岡村靖幸の歌う「俺はムード派だから、援助交際なんて、わかんないよ、たまんないよ。でもあなたに情がでる」みたいな内容の方が同じ目線にたった上での親身な優しさに満ちている気がする。
サウンドはアップテンポでダンサブル。「ステップUP↑」を彷彿とさせるほどノリの良い曲に仕上がっている。ハレンチのライブ映像は「Me-imi Tour 2004」にのみ収録されているのだが非常に盛り上がっている。振り付けもしっかりと施されており、岡村靖幸の楽曲におけるアゲうたとしても秀逸。

セックス★★★
同じフレーズが何度もしつこく焦らすようにファンクに繰り返されるグルーヴは、まるでジェームスブラウンの「セックスマシーン」のよう。8分18秒と長い曲だが殆どは同じフレーズで歌われる「君がどんな~」という非常に卑屈な歌詞が際限なく続いている。はっきり言って病んでいる。曲構成は、一曲のなかでどんだけ音楽を展開すれば気が済むんだというほどに好き勝手にアレンジしまくっている。サウンドの格好よさに耳を奪われ、誤魔化されそうだが、歌詞はシビアだ。ロッキングオンのインタビューで語っているように「セックスはほんとに出すの悩みました。つまりあんなにネガティブな歌をシングルで出して、かつあんまり救いもなかったし」「女の人は喜ぶかなっていうのはずーっと疑問でしたね。ヤな気持ちになんじゃないか(中略)ほんとにそれが答えであろうと…知りたくない答えってあるわけじゃないですか」とリリースに際して非常に悩んだようだ。
あの岡村靖幸の歌のタイトルが「セックス」とあれば、100パーセント性交という意味でのセックスを想像しがちだが、歌われている内容は、性差やジェンダーという意味合いのセックスだ。「君があらゆることをやったところで世の中には不平等な性差がある、あん時言ったろ」というような突き放した、冷めた内容の歌詞だ。このような歌詞があるため、インタビューで「女性がヤな気持ちになんじゃないか」と話していたのだろう。実際、田島ようこ辺りが聴けば激怒するのかもしれない。ちなみにこの曲は「Me-imi」の最終曲にマシュマロハネムーンとミックスした形で収録されているのだが、そちらの方が数倍洗練された格好良いアレンジとなっている。

真夜中のサイクリング★★★★★
痛々しいほどに切ない空気感を閉じ込めたミディアムバラード。無機質に響くキーボードの寂しげな単音と幻想的でけだるいコーラス、所々ノイズのような音になるアレンジがやや前衛的な出来栄えとなっている。「真夜中のサイクリング」というタイトルからして切なく感じてしまうのは自分だけだろうか。岡村靖幸が夜中、自転車に乗っている様子を想像すると、結構哀しいものがある。夜中に当ても無く自転車に乗り、夜風に当たりながらひたすらにペダルをこぎ、背中にはじっとりと汗が。帰りはコンビニに寄り弁当と酒と適当な雑誌を買い、誰も居ない暗いマンションの鍵を開ける岡村靖幸…。実際は陽気で愉快でゴージャスな生活を送っているのかもしれないが、「真夜中のサイクリング」を聴くとこんな風な哀愁たっぷりの岡村ちゃんを想像してしまう。
「真夜中のサイクリング」がシングルとしてリリースされたのは2000年。そのため、声がややこもっている。今と比べるとまだ出ているが、ある種の前兆は十分に伺える。声帯が消耗していく過渡期の声に一層切なさが増す。歌詞に関しては名フレーズが多発している。なかでも有名なのは「自ら脇役に志願してるようなもんじゃん」だろうか。マシュマロハネムーンもそうだが、この頃の歌詞はまるで自分自身に問いかけるような歌詞が多い。


マシュマロ・ハネムーン★★★★★
マイペースに唸っているメロディアスでキャッチーなベースとエッジの利いたキレの良いリズムが絶妙にマッチした名曲。最初から最後まで一定のテンションで繰り出されるリズム隊の爽快な一体感が病み付きになる。これほどまでに心躍る曲はそうはないだろう。曲の構成はシンプルでありながら、サビを最大限に生かすためだけに作られたような秀逸なBメロの溜めと解き放たれたような高揚感が得られるサビの抜群なメロディは何度聴いても最高だ。それに乗せて歌われる歌詞が「快感 傍観 同じ夜でもどんなにするかは僕しだい 体感 直感 楽しめる二人なら星も降る」。なんて素晴らしい歌詞なんだろうか。サビ以外の歌詞は「散弾銃の隊長も母の名を叫ぶ」などを筆頭に真意の掴みにくい詩が乱立しているため、余計にサビの歌詞が真っ直ぐに突き刺さる。
「マシュマロ・ハネムーン」というタイトルの可愛らしさに呼応したかのように、アレンジもキュートでユニークなSEが挿入されていたり岡村靖幸のボーカルの裏でアニメ声の女性が一緒に歌っていたりと、非常に愛らしくカラフルな出来となっている。「ラブタンバリン」「スーパーガール」「うちあわせ」など初期作品特有のキラキラとした輝きを感じ取ることが出来る。後奏ではファンク色濃厚なリズムにいつの間にか変わる。カッティングも加わりドスの利いた低音のシャウトが聴ける。一度に二度おいしい名曲。



岡村と卓球
The Album

1. the splder ★★★
異空間に紛れ込んだようなコスモス的なサウンドから唐突にはじまるオープニングナンバー。「今の俺の表情」や「夜の猛獣」など印象的な言葉を羅列するように並べる岡村靖幸のセクシィボイスが得体の知れないワクワク感を煽る。徐々にノイズが混じり最後は砂嵐のようにノイズだけになり2曲目へ移行する。

2. rock'n roll slave ★★★
1曲目とは打って変わり、親しみやすいディスコナンバー。石野卓球の影響と思われるテクノやノイズが混じっているもののキャッチーさは失われていない。テクノが苦手な人でも許容できる範囲で巧く暴れているといった感じ。

3. new wave boy ★★★★
「come baby」のリフをベースにしたファンクとテクノの融合曲。サビでは岡村ちゃんと石野卓球が一緒に声を合わせ同じメロディを歌っている。岡村・卓球がユニゾンで歌っているのはこの曲だけ。なぜだが妙に微笑ましい。

4. come baby2 (meet you@hardrock cafe) ★★★
どこかのスタジアムで行われているロックコンサートの歓声のようなSEからはじまる「come baby2」。ややロック調のインストである。XJAPANのライブの「HIDEの部屋」でHIDEがストリップの姉ちゃん方と一緒に戯れている時に流れていそうインスト。

5. funky pink rotor ★★
Lipps Inc.の「Funky Town」を彷彿とさせる陽気であっけらかんとしたピコピコサウンドとふわっと入ってくるヘヴィで不穏なギターがマッチしている。ヴォーカルは卓球。

6. adventure (e-pop mix) ★★
ヴォーカルを過度に加工しているため、岡村・卓球のどちらがボーカルなのかが分からない。全体的なアレンジもぼやけており聴いていてあまりすっきりしない。ビジネスバージョンや本作のボーナストラックに収められているj-pop mixバージョンの「adventure」は名曲だが、このアレンジの「adventure」では本来有しているはずの輝きが伝わらない。

7. abnormal frequency ★★★
サビの歌詞やメロディが、井上陽水の「カシス」というアルバムに収録されている、「恋のエクスプレス 」「イミテーション・コンプレックス」あたりの雰囲気と非常に似ている。2007年に行われたタワーレコードのインストアライブで井上陽水の「ワインレッドの心」を歌っていたし、案外この曲はい陽水にインスパアされて作ったのかもしれない。

8. alfa inn ★★★
2007年の告白ツアーのセットリストの2曲目に披露された「alfa inn」。これにより、「The Album」の作品の中では「come baby」「adventure」に続く知名度を獲得した曲といえる。エレクトロニックなサウンドにボソボソと何を言ってるんだかよく聴き取れない(「The Album」には歌詞カードがない)ボーカルで始終歌っている。

9. come baby ★★★★★
シングルとしてリリースされた「come baby」。「岡村と卓球」名義でリリースした曲の中で、もっともアグレッシブで完成度が高い出来に仕上がっており文句なく本作における代表曲。エロス全快でねっとりとセクシィなボーカリゼーションはソロの岡村ちゃんとは一味違うエロスであり、そこはやはり石野卓球の影響なのだろう。「冷たく見下してよ いじわるく笑ってよ」という超ドMな歌詞がこれほど違和感なく馴染む曲はそうはないだろう。

10. eclipse ★★
地球の壮大な自然をテーマにNHKが制作したドキュメント番組のBGMとして流れてそうな幻想的な曲。俯瞰し悟りを開いたような感じのスローなインスト。ヒーリングミュージックのような癒し系であり、故に眠くなる。

11. turtels have short legs ★★★★
ビートルズの「オブラディ・オブラダ」と似た曲調の陽気で愉快なナンバー。無邪気というか何も悩みがないような声で歌われる卓球の声が印象的。当たり障りのない爽やかな曲だが曲の中盤で岡村靖幸が変なシャウトをしながら登場しすぐにフェイドアウトするのが面白い。英歌詞だからかもしれないが、曲のニュアンス(あるいは肌触り)は100%洋楽である。

12. ウキウキWATCHING ★★★
ラストを飾るナンバーは「笑っていいとも」のOPで歌われる「ウキウキWATCHING」のカバー。この国民的スタンダードナンバーを岡村・卓球の悪ガキ二人が好き勝手にアレンジしまくっている。ふざけた感じが良い。サザエさんのエンディング曲を聴いた時の寂しさが襲ってくるようなセンチメンタルなアレンジとなっている。ボーカルは加工されているため岡村・卓球のどちらが歌っているかは分からない(どちらも歌っていないかもしれない)が最終曲の位置に妙にハマっている。

13. adventure (j-pop mix) ★★★★★
ボーナストラック1。6曲目のe-pop mixバージョンより遥かに聴きやすいアレンジとなっている。ボーカルに施されたエフェクトは外されサウンドはクリアになっている。万人の耳に馴染みやすく聴きやすいから〝j-pop mix〟なのだろうか。もしや皮肉?

14. come baby (yasuyuki okamura remix) ★★★
ボーナストラック2。ビジネスバージョンの「come baby」のテンポを遅くし、ねっとり感をよりフューチャーしたアレンジとなっている。途中のギィギィという軋むような音が、良いアクセントになっている。



ミイミ
Me-imi

1.5!! モンキー ★★★
初っ端から、とんでもなくカオスな曲。どのような規則性の基に鳴っているのか分からない複雑なリズムと、自由奔放好き勝手に暴れていて安易に納まらない感じの裏メロが前衛的。はじめてこの曲を聴いた時は、そのアレンジの凝り過ぎ加減に笑ってしまったほどだ。とにかくテンションが高く、いろんなものが圧縮され、終盤には転調し、スイングし、アドリブ英語が飛び出し…。それまでの岡村靖幸のどの曲にもカテゴライズされない全くの新境地が1曲目で聴ける。
「禁じられた生きがい」をリリースしてからの岡村靖幸は俗世間から目をそむけるかのように引きこもった。そして太りコンフューズした。しかし鹿野さんの助けもありなんとか復帰した。そして実に9年ぶりのアルバムが本作「Me-imi」である。「5!! モンキー」は待ちに待った記念すべきアルバムの1曲目だ。岡村靖幸にとってもファンにとっても悲喜交々な想いがもっとも集約されるであろう「5!! モンキー」の歌いだしは――合唱部の部長さん おっさんも魅了しちゃう、である。…らしいと言えばそれまでだがやや肩透かしだ。どうやらまだ岡村靖幸はコンフューズの最中らしい。

2.モン‐シロ ★★★★
「5!! モンキー」からのメドレーではじまる、「モン‐シロ」は復活第一弾のシングルとしてリリースされたキャッチーなファンクディスコ。キャッチーというのはあくまでもメドレーで聴いた場合の話だ。前の曲があまりにも前衛的なつくりのため、感覚がやや麻痺し、キャッチーに感じるのだろう。サビや後奏で流れるアコギがラテン調風になっており、何とも言えないエキゾチックな世界観が広がっている。また、最初は巧妙にオブラートに包まれているため気付かなかったが、実はかなりエッチな歌詞である。

3.ア・チ・チ・チ★★★★★
ライブで演奏される頻度の高さから、もはや岡村靖幸の代表曲といっても差し支えないであろうクラブミュージック「ア・チ・チ・チ」。「5!! モンキー」と同様に、岡村靖幸がそれまでに発表したどの系統の曲にもカテゴライズされない全く新しいタイプの曲。まるで、どこかの怪しげな工場に紛れ込んだかのような騒がしい機械的な音が随所に挿入されている。その一方、流行を捉えた現代風の洗練されたリズムとアレンジが施されており、トータルではオシャレ系の曲としてまとまっている。

4.ファミリーチャイム ★★★★★
ハートフルなラブバラード。「カルアミルク」や「友人のふり」などの秀逸なバラードと比べても劣らないほどの名曲。この曲を聴くと涙腺が危なくなる。幸せな日々を何が何でも手に入れたいという希求、しかし結局は手に入れられず渇望したまま終わっている様子が感じられて切ない。「安心に近い時の10時30分はもうすぐさ」は屈指の名フレーズ。

5.ミラクルジャンプ ★★★★
爽やかで疾走感溢れる青春ソング「ミラクルジャンプ」。やはり岡村ちゃんといえば、青春ソングである。「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」「パラシュートガール」「生徒会長」「19」などなど、煌いた青春ソングこそ岡村靖幸にとっての真骨頂だ。イントロは、奇をてらわないシンプルなドラムとベースで奏でられる躍動感満点のリズム。それに合わせてドスの利いた岡村ちゃんの「ウッ!」「カモン!」「フォー!」というシャウトだけでご飯3杯はいける。「いわばシャイで 引きこもりの 日常を返上したい」という歌詞は本作「Me-imi」のリリースに漕ぎ着けるまでの岡村靖幸を象徴するフレーズであり、完全復活を予兆させるフレーズであった。前向きで聴き手をもポジティブな気分にさせる素晴らしいフレーズだ。

6.未完成 ★★★
楽器はピアノオンリー。これ以上ないくらいシンプルなつくりである。だからタイトルが「未完成」なのだろうか。夜のしじまに部屋でひっそりと佇みながら作ったような寂しい曲。「失って分かったんだ どうかしてたんだ」という歌詞からは、普通なら失恋の意味合いを想像するだろうが、岡村靖幸が歌うと、どうしようもないほどに深刻な状態を歌った曲のように感じる。

7.軽蔑のイメージ ★★★
歌詞の支離滅裂さやカオスなアレンジからは1曲目の「5!! モンキー」と似た印象を受ける。何が言いたいのかよくわからない歌詞なのだが、どことなく卑屈さと厭世的なニュアンスが漂っている様に思う。以前シングルでリリースされた「セックス」と双璧を成すほどの厭世観を有した曲だ。

8.マシュマロハネムーン~セックス ★★★★
2000年ごろにリリースしたシングル「マシュマロハネムーン」と「セックス」をリミックスしメドレー形式で1曲に仕上げた珍曲。イントロから激しく濃厚にファンクしている。〝Me-imiサウンド〟の集大成と称したいほどに気持ちの良いリズムが終始鳴っている。頭を空っぽにして聴いていても自然と体がリズムを取りはじめるくらい良質なグルーヴが愉快。この曲のみに関していえば、昔のハリと伸びのある声よりも少々潰れた今の声の方が似合っている。
原曲を知らない人が聴くとメドレーとなっている〝つなぎ目〟がどこにあるのか分からないだろう。それくらい同じ曲調のアレンジとなっている。「マシュマロハネムーン」に関してはアレンジにしても歌メロにしても、原曲の方が個人的には好きだが、このバージョンも決して悪くはない。特に「セックス」に関してはこちらのアレンジのほうが数倍カッコイイ。ラストを飾るに相応しい曲なのかはイマイチよく分からないが、これほどまでにファンキーでファンクネスなグルーブで終わるのも悪くない。



ビジネス
ビジネス

1. Intro ★
〝Intro〟といってもインストではなく、NKホールで行われたミイミツアー最終日のMCを収録したもの。しかも岡村靖幸のMCではなく深澤さん(和服を着ていた人)のMCなのだからふざけている。唐突に威勢良く「元気ですかー!!」とアントニオ猪木風に叫ぶという変なテンションで終始喋っている。内容を要約すると「今日でミイミツアーが終わり、みんなと会えなくなるのは凄く寂しい。でも必ず戻ってくるから、その間は約9年ぶりのニューアルバム『ミイミ』を聴きながら待っててくれよ。よろしくお願いしますっ!」というもの……岡村靖幸本人の口から聞きたいものだ。

2. ア・チ・チ・チ ★★★★
オリジナルバージョンよりもテンポが速く、駆け足のような疾走感が気持ちよい。立てノリのリズムに身を任していると自然と汗ばむくらいリズミカルな演奏が楽しい。ミイミバージョンのア・チ・チ・チは歌詞などから察するにどちらかというと重々しいイメージがあったのだが、このアレンジで聴くと、コミカルに聴こえるから不思議だ。中盤の「エビバディ~いいかい~レッツゴー」の箇所も然りだが「ア・チ・チ・チ」は本来コミカルな曲なんだということが発見できるアレンジになっている。

3. 聖書 (バイブル) ★★★
サードアルバム「靖幸」に収録されている岡村靖幸の代表曲「聖書」のセルフカバー。「ア・チ・チ・チ」のような最近の曲だとあまり気にならないが、全盛期の頃の曲だとどうしても声の劣化(特に高音の箇所)が気になってしまう。しかし、声の問題なんかぶっ飛ぶ程アレンジが素晴らしい。背景で密かに暗躍しているストリングスはまるで何らかの暗示を含ませているように独特の不気味さを放っていて病み付きになる。ちなみに最後の4タイムでの終わり方は2004年の暮れに「ニュース23」に出演した際披露した聖書と同じバージョンだと思われる。

4. come baby ★★★★★
本作のベストトラックと信じて疑わない、超名曲!岡村と卓球の「The Album」に収録されている「come baby」よりも遥かにアグレッシヴで扇情的なサウンドに仕上がっている。聴いていると汗とアドレナリンが噴出し、体が勝手に動き出すのではないかというくらいノリノリな音楽。この細胞が沸き立つ感覚はXJAPANの「オルガスム」や「X」をライブDVDで視聴する時と似ている。これは聴くべき。

5. adventure ★★★
遊び心満載のアレンジはまるでべックのよう。曲の原型が定まってなく自由奔放に好き勝手に突き進んでいく〝さま〟が愉快。匿名的な声で意味不明な言葉を呟いている人が居たり、突然ラップがはじまったり、どんどんこじれたアンサンブルに展開したり、と相当カオスな曲。その一方、サビはこれ以上ないくらいキャッチーで売れ線のメロディーが歌われている。マクロ的な視点から全体像を眺めると幾何学的なまとまりがあるような気がしないでもない。

6. Check out love ★★★★
ファーストアルバム「yellow」に収録され、またセカンドシングルとしてもリリースされた「Check out love」のセルフカバー。80年代中盤に発表された曲とは思えないほど現代風の楽曲として蘇っている。普通、アレンジを変えただけではこれほどまで劇的には生まれ変わらないだろう。「Check out love」の根本・本質には色褪せることのない普遍性が宿っているからこそ、アレンジを少し変えただけで、たちまち2008年に聴いても古臭く感じない曲に仕上がるのだろう。
はじめから最後まで怒涛の如くぶっ太く力強いサウンドが圧巻。まるでアフリカに生息する巨大なサイが土誇りを撒き散らしながら突進してくるような…そんな凄まじさが感じられる。それくらい目(耳)を見張るほどの勢いがある。



アジャパイ
unaffected

Midnight Wolf★★★★★
やたらと手数の多いテクニカルなドラミングと淡々とマイペースに奏でられるキーボードが怪しげに交わったイントロに乗せ、覚醒寸前の狼の声を模したような岡村靖幸の呻き声からはじまる「Midnight Wolf」。大都会東京の深夜の危ない裏の顔を曝け出したような歌詞が印象的。暴力やら犯罪やらネオン街やらチャイニーズマフィアやら、血なまぐさい光景を想起させる歌詞の世界観はまるでPSソフト「龍が如く」のよう。
忙しない程に手数が多く、夜の闇を走るようなテンポの速いサウンドは、アジャパイの真骨頂であるDJ卓上でのプレイがあってこそだろう。サビの「頑張れーよ、頑張れーよ 未熟な自分で」と「やっぱでーも、やっぱでーも 寂しい夜をジャンプ」はかなり中毒性のある秀逸なメロディであり、ついつい口ずさんでしまうこと受けあい。

大車輪★★★★
2002年にタワーレコードで限定発売(アナログ盤で)された「DAI-SHA-RING」。2002年といえば、岡村靖幸の表立った活動が極端に少なかった時期なので、当時は随分注目された曲。タイトルを「DAI-SHA-RING」から「大車輪」にし本作「unaffected」で2006年にCD化されたという経緯を持つ曲。
軽快なタッチのキーボードと全体的に洗練されウェイトの軽い感じの演奏が心地よいミディアム・ダンスチューン。晴天の空のように爽やか且つ涼やかで胸を透くようなサウンドは、岡村靖幸のソロでは聴けないタイプの曲調だろう。岡村靖幸は作詞を担当し、作曲と編曲は他人が担当している。だからこそ、岡村靖幸らしからぬ風流な爽やかさが実現しているのだろう。
注目すべきは「茶髪のブランド命のにーちゃん 女を絶対泣かせるな」という歌詞。やや上から目線で若者を諭すようなこの歌詞はちょっと背伸びをして書いているような気がする。自分の曲の歌詞には、ウジウジしていたり、抽象的だったり、切なくなるとすぐに屋上に向かってしまうような情けない歌詞が多いのに、提供となると年相応の立派な歌詞が書ける岡村靖幸は、なんだかんだで20年選手のベテランでありプロだ。



アルバム未収録曲

MARIA★★★
「Young oh! oh!」を彷彿とさせる威勢の良いダンスチューン。サウンド全体から受ける印象は、ファーストアルバム「yellow」からのそれとほぼ同じ。初期特有のまだ持ち前の個性を発揮できていない没個性気味あるいは消化不良的な岡村靖幸が楽しめる。歌声は微笑ましいほどに若々しく、歌詞は無難だが、それ故貴重な曲といえる。個人的には、吉川晃司が腰を振りながら「ベストテン」で歌っている絵が浮かぶ。それほど曲調が80年代的。20年以上前の曲なので仕方ないけど。

幾千年分のPAIN★★★
記念すべき岡村靖幸のデビュー曲「Out of Blue」のカップリングに収録された「幾千年分のPAIN」。岡村靖幸の曲は洋楽ナイズされ比較的洗練された楽曲が多いが、この曲からは歌謡曲テイストが感じられる。特にBメロの「つたく身を飾り 舞い踊るほかに~」の部分はもろ歌謡曲。「MARIA」と同様に「幾千年分のPAIN」もいかにも初期作品といった感じ。もし「yellow」の5曲目辺りに紛れ込んでいても何の違和感もないだろう。

せぶんてぃーん★★★★
シンプルな楽器編成と飾り気の控えめなアレンジが施されたミディアムバラード。まるで雨上がりのキラキラした清潔な街並みを想起させるような情緒的で美しいメロディが印象的。歌詞は「散々授業サボっても 散々ガラスを割っても いつでも僕を許してくれた」とやや尾崎豊チック。しかし、尾崎豊のようにガラスを割り社会や大人に反抗している、といった内容の歌詞ではなく、青春時代をしみじみと振り返り(たぶんタイトルから察するに17歳の頃だろう)、好き勝手に生きていた自分を省み、それを許してくれた両親に感謝するといった内容だ。センチメンタルな気分にさせてくれる名曲。

なごり雪★★★
フォークソングのクラシックであるイルカの「なごり雪」のカバー。エキゾチックでダンディで、まるで子宮に直截的に訴えかけるような低音ボイスがセクシィ。イルカさんの歌声とは正反対のため、曲のイメージはガラっと変わっている。原曲より寂しげな哀愁が漂っている。後奏ではアドリブ英語のシャウトが披露されており「岡村靖幸流・なごり雪」として成立している。

やましい たましい★★★
フォークソング調のメロディに乗せ、力強い想いが込められたメッセージソング。魂を揺さぶるような熱い歌唱で終始歌っている。「大人はどうして子供を育て 愛情を注ぎ 寝顔を見るの でもちょっと待ってよ いまこんなことが俺にはできないのは 何故だろう」という歌詞は〝らしい〟というかある意味岡村靖幸の真骨頂だ。サビ終わりのファルセットは濁ることなく響いており、間奏では高度なギターテクニックが披露されている。岡村靖幸の音楽的資質の技巧が味わえる1曲。

ハッピー ウェディング★★
「ビスケットラブ」や「祈りの季節」辺りの系統(いわゆるアダルトな匂いをプンプン漂わせた感じ)の延長線上に存在する曲。ライブの弾き語りで歌った曲をそのままCD化したのではないかと考えてしまうほどアドリブで瞬間的に紡いでいったようなメロディは秀逸。歌詞はハレンチのように時事ネタ(オヤジ狩り、テレクラ)を扱っている。全体的に重々しく、岡村靖幸の曲のなかでは異色作といえる。

はっきりもっと勇敢になって★★★★
2007年の復活の際にリリースされた最初にして最後のシングル。「ミラクルジャンプ」のように爽やかで力強いサウンドに乗せ、自らの正直な心境を歌っている。復活第一弾だけあって、歌詞はとにかく前向きだ。メッセージは明快でシンプル。1曲中に同じ歌詞のサビが4回もリピートされている。これだけサビが繰り返される曲も珍しい。この繰り返されるサビがとても良い。達観したような、悟ったようなスケールの大きい仕上がりとなっている。
ポジティブな歌詞が多く特に「同じ様な日々はもうすぐ 過去だぜ」は心に残る。あと「よく考えてみてよ 僕がアンサーだぜ」という歌詞もある。岡村ちゃんがアンサーなのか?まあ、前向きなのは良いことである。曲の最後には、岡村ちゃん流のアドリブ英語も披露されているし、お馴染みの「フォー」の雄叫びもある、ヘッドフォンで聴くと岡村ちゃんらしい凝ったアレンジが施されている。

嵐の気分(着替えをもって全裸のままで)★★
5秒程度のリズムのみのイントロがはじめに流れるのだが、これがもう、プリンスだ。たぶん、このイントロを聴いた過半数の人はプリンスを思い浮かるのではないか。イメージとしては家庭教師の「祈りの季節」「ビスケット」あたりの大人な雰囲気漂うミディアムテンポな曲調と似ている。ただ歌詞は違う。割と真面目でシビアだ。決してスッペイン料理がどうのこうのなんて歌詞は無い。「もう許されぬのに 心震わせる様に」「でも探してるのに 反省してるのに 惨めなだけさ」など、「はっきり~」と比べると後ろ向きだ。でもサビの歌詞は「昔ながらの我らが岡村靖幸」な愛すべき歌詞だ。ラストは岡村ちゃん流のシャウトが炸裂している。



BLUE 〜‎A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI

太陽の破片/岡村靖幸 ★★★★★
尾崎豊を語る上で最重要曲は何だろうか?と尾崎ファンが考えた時、かなり早い段階で挙がるであろう名曲「太陽の破片」。尾崎豊が覚せい剤取締法違反で捕まった後に、リリースされた曲であり、故に歌詞の内容は、薬物を使用し絶望の縁で苦悩する姿が歌われている。そんな曰くつきの曲をあの岡村靖幸がカバー。なんて意味深なんだろう。この頃の岡村靖幸は既に薬物を使用し、一度捕まっているわけだが、世間には公表されていなかった。全ての事実関係が明るみに出た現在、岡村靖幸が歌う「太陽の破片」を聴くと何とも言い難い心持になる。

肝心の岡村版「太陽の破片」だが―――まあ、あの岡村靖幸がカバーするわけだから一筋縄でいかないのは前段階で予想がある程度つくものの、まさかここまで変形させるとは思わなかった。原曲のメロディーを完璧に無視し岡村流にメロディメイクしている。もちろん基本的なコードは同じだが、同じコードの中で新たに作曲している。

サウンド面は同じアルバムに収録されている音とは思えないほど異質にクリアだ。どこか気品に満ちていて、その上刹那的な哀愁に満ちている。確固たる世界観が構築されており、他とは明らかに格(あるいは質)が違うということが明確にはっきりとわかるだろう。そんな洗練された演奏に乗せ岡村ちゃん節炸裂なクセのある歌い方でくどく歌っている。岡村靖幸を日々聴いている自分からすると別に何の違和感も無いが、岡村未経験者の尾崎ファンからするとこれは相当〝眉唾〟ものらしく結構バッシングされているようだが、…まあ仕方が無い。

「もし君が暗闇に」というフレーズを「もしぃ~、もっもっもし、君が暗闇に~」と歌ったり「ごらん僕を太陽の破片が~」というフレーズを「(吐息交じりで)ごらんごらん僕を太陽の破片が」と変態っぽく歌ったりと、確かにふざけているように聴こえるかもしれない。尾崎ファンには硬派な人(特に往年のファンには)が少なからず存在するので、カチンと来た人も中にはいたかもしれないが、「決して靖幸はふざけてはいない、いたって真面目なんです」と岡村ファンとしては言っておきたい。



ビバナミダ★★★★★
2013年10月2日に岡村靖幸のニューシングルがリリースされた。前作「はっきりもっと勇敢になって」は2007年にリリースされた作品なので実に6年ぶりのニューシングルとなる。岡村靖幸の新作が出る、という事実はもちろん嬉しいのだが、純粋に100パーセントの喜びではなく多少の“不安”があった。というのも前作「はっきりもっと勇敢になって」が個人的にはあまり好みではなかったからだ。

「はっきりもっと勇敢になって」は、当時復帰第一作目の記念すべきシングルであったから当然発売日に嬉々としてCDショップに買いに行ったが、2~3回聴いただけでそれ以上聴きこむことはなかった。駄曲だったとは思わない。むしろ良曲だ。しかし、なんていうか岡村靖幸ならではの中毒性のようなものが「はっきり~」にはなかった。

今回の新作「ビバナミダ」のリリースを知った時、もし自分の趣味に合わなかったらどうしようか、という懸念が少々あった。しかし、見事なまでに「ビバナミダ」はその懸念をブッ飛ばしてくれた!もう、最高じゃん!ビバヤスユキ!

「ビバナミダ」を初めて聴いたのは2013年3月30日、ZEPPSAPPOROでのライブだった。第一印象はよくわからないけどサビがキャッチーであること。そして、歌詞に“ナミダ”というワードがあることくらいしか把握できなかった(きっと会場にいるベイベの殆どがそう思ったであろう)。熱狂しているライブで新曲を披露されたところで曖昧で抽象的な記憶しか残らないわけだが、僕は「この曲は悪くないぞ」と確信した。

そして、時は流れ10月2日に「ビバナミダ」がリリースされフルで聴いた。やっぱりこの曲は最高だった。最新型の岡村靖幸であった。過去の岡村靖幸の曲には無い全く新しい曲調だ。でも、しっかりブラックにファンクしているし岡村節が炸裂しているし、ノリノリになれるし、なによりキャッチーだ。

「ビバナミダ」は最初のうちは全体的にごちゃついたイメージがあった。つまり、あまりにもサビがキャッチーすぎるためサビに辿り着くまでのAメロとBメロが相対的にもたついているように思えたのだ。しかし、曲を何度もリピートし曲の全体像を把握すると秀逸な構成であることに気付いた。

普通は「AメロBメロ→サビ」だが「ビバナミダ」は「AメロBメロ→(マンマミーア)→AメロBメロ→Cメロ→サビ」となっている。AメロBメロを焦らしながら2回も繰り返したあとにやっと新たな展開としてCメロ(たまには暴れな~)が登場。Cメロのメロディが既に爽快でキャッチーなメロディであるにも関わらずCメロ終わりの「皆同じ人間だ」でさらに勢いをつけ、遂にサビに突入。これ以上ないくらいにキラキラと輝いたサビに突入するのだ。聴いていてカタルシスを得られる構成になっている。さすが元々は作曲家としてデビューしただけある。職業作曲家的な巧みに計算された構成になっている。

サウンド面は近年の岡村靖幸の趣向が反映されているように思う。イントロからしてデジタルチック、あるいは近未来的だし、電子的なドラムマシンが心地よく響いている。「ビバナミダ」にはこのサウンドがよく似合っているし、なにより最新型の岡村靖幸のサウンドが聴けることは一ファンとして嬉しい。

あとは、やはり歌詞…である。「ビバナミダ」の歌詞のクレジットは「岡村靖幸 西寺郷太」となっている。共作だ。これまで岡村靖幸はずっと作詞作曲編曲を頑なまでに一人でやってのけてきたわけだが今回は共作だ。

個人的には「ビバナミダ」の歌詞は大好きだ。歌いだしの「どこから来たかなんて わからないほどの日々で」という歌詞はクールで好きだし「眠りの解けた瞬間~」という歌詞も夜の闇にふと目覚めた時のイメージが想起されて好きだ。西寺郷太さんの歌詞は素晴らしい。しかし、僕は岡村靖幸が苦労して作った歌詞で歌われた歌を聴きたい。

「その涙 僕にゆだねてくれないか」

という歌詞がある。僕はきっとこのフレーズは岡村靖幸のなかから産まれた歌詞じゃないのだろうなと直感的に感じた。「僕に君の涙をゆだねておくれ」なんていう男気のある立派な歌詞は書かないよ。歌詞に関しては、まぁ、でも、う~ん…。難しい問題ですけどもねぇ。スッキリしない部分があることは事実だ。

とはいえ、西寺郷太さんが居たからこそ名曲「ビバナミダ」が誕生したのであり、一ファンとしては感謝感謝である。

ヘルシーメルシー★★★★
「ビバナミダ」のデジタルサウンドから打って変わってのアコースティックなバンドサウンド。音数も少なく非常にシンプルな楽器編成で成り立っている。良い意味で“B面”的な曲。岡村靖幸がリビングでオベーションのギターを抱え、お酒でも飲みながら、ちょっくら新しい曲でも作ってみようかしらとリラックスした状態で産まれたかのような曲。

岡村靖幸にしては珍しく王道なコード進行でメロディラインもポップ。初見で聞いても曲の終わりにはサビを一緒に合唱できるくらいポップ。過去の曲で言えば「ターザンボーイ」と似ているだろうか。岡村靖幸らしからぬ一般受けしそうな曲調だ。

「はっきり~」からの6年間の間にいろいろあったわけだが、「ヘルシーメルシー」という曲は岡村靖幸からのベイベに対する初めてのアンサーとして受け取ってよいのではないだろうか。この歌で歌われている内容がまんま今の岡村靖幸なのだろう、と僕は思う。

それにしてもやっぱり歌詞は岡村靖幸じゃないとダメ。だって「ヘルシーメルシー」の歌いだしから何て言っているのかわかんないもの。歌詞カードを見てなんとか認識できるレベルだもの。「全身水中」と歌っているらしいが僕には「青春渦巻く」に聴こえたもの。この空耳アワーっぷりが岡村靖幸の魅力の一つでもあるよなぁ。

「ビバナミダ」が優れた曲であるならば「ヘルシーメルシー」は愛すべき曲だ。


岡村靖幸の記事

岡村靖幸で「ビジネス」 全曲解説

1. Intro ★
〝Intro〟といってもインストではなく、NKホールで行われたミイミツアー最終日のMCを収録したもの。しかも岡村靖幸のMCではなく深澤さん(和服を着ていた人)のMCなのだからふざけている。唐突に威勢良く「元気ですかー!!」とアントニオ猪木風に叫ぶという変なテンションで終始喋っている。内容を要約すると「今日でミイミツアーが終わり、みんなと会えなくなるのは凄く寂しい。でも必ず戻ってくるから、その間は約9年ぶりのニューアルバム『ミイミ』を聴きながら待っててくれよ。よろしくお願いしますっ!」というもの……岡村靖幸本人の口から聞きたいものだ。

2. ア・チ・チ・チ ★★★★
オリジナルバージョンよりもテンポが速く、駆け足のような疾走感が気持ちよい。立てノリのリズムに身を任していると自然と汗ばむくらいリズミカルな演奏が楽しい。ミイミバージョンのア・チ・チ・チは歌詞などから察するにどちらかというと重々しいイメージがあったのだが、このアレンジで聴くと、コミカルに聴こえるから不思議だ。中盤の「エビバディ~いいかい~レッツゴー」の箇所も然りだが「ア・チ・チ・チ」は本来コミカルな曲なんだということが発見できるアレンジになっている。

3. 聖書 (バイブル) ★★★
サードアルバム「靖幸」に収録されている岡村靖幸の代表曲「聖書」のセルフカバー。「ア・チ・チ・チ」のような最近の曲だとあまり気にならないが、全盛期の頃の曲だとどうしても声の劣化(特に高音の箇所)が気になってしまう。しかし、声の問題なんかぶっ飛ぶ程アレンジが素晴らしい。背景で密かに暗躍しているストリングスはまるで何らかの暗示を含ませているような独特の不気味さを放っていて病み付きになる。ちなみに最後の4タイムでの終わり方は2004年の暮れに「ニュース23」に出演した際披露した聖書と同じバージョンだと思われる。

4. come baby ★★★★★
本作のベストトラックと信じて疑わない、超名曲!岡村と卓球の「The Album」に収録されている「come baby」よりも遥かにアグレッシヴで扇情的なサウンドに仕上がっている。聴いていると汗とアドレナリンが噴出し、体が勝手に動き出すのではないかというくらいノリノリな音楽。この細胞が沸き立つ感覚はXJAPANの「オルガスム」や「X」をライブDVDで視聴する時と似ている。これは聴くべき。

5. adventure ★★★
遊び心満載のアレンジはまるでべックのよう。曲の原型が定まってなく自由奔放に好き勝手に突き進んでいく〝さま〟が愉快。匿名的な声で意味不明な言葉を呟いている人が居たり、突然ラップがはじまったり、どんどんこじれたアンサンブルに展開したり、と相当カオスな曲。その一方、サビはこれ以上ないくらいキャッチーで売れ線のメロディーが歌われている。マクロ的な視点から全体像を眺めると幾何学的なまとまりがあるような気がしないでもない。

6. Check out love ★★★★
ファーストアルバム「yellow」に収録され、またセカンドシングルとしてもリリースされた「Check out love」のセルフカバー。80年代中盤に発表された曲とは思えないほど現代風の楽曲として蘇っている。普通、アレンジを変えただけではこれほどまで劇的には生まれ変わらないだろう。「Check out love」の根本・本質には色褪せることのない普遍性が宿っているからこそ、アレンジを少し変えただけで、たちまち2008年に聴いても古臭く感じない曲に仕上がるのだろう。
はじめから最後まで怒涛の如くぶっ太く力強いサウンドが圧巻。まるでアフリカに生息する巨大なサイが土誇りを撒き散らしながら突進してくるような…そんな凄まじさが感じられる。それくらい目(耳)を見張るほどの勢いがある。

総評★★★★
『Me-imi』から僅か7ヵ月後にリリースされた「ビジネス」。このアルバムは、きな臭いアルバムである。だいたい、9年もの間沈黙していた人がたったの7ヶ月でリリースしないだろう。タイトルの「ビジネス」というネーミングからも推測できるが、岡村靖幸は本当はこのアルバムを出したくなかったようだ。しかし、出さなければいけない大人の事情から出したようだ。その当てつけ(かどうかは分からないけど)に付けたタイトルが「ビジネス」。

当初、「ビジネス」は、2004年に行われたミイミツアーの音源を収録したライブアルバムとしてリリースする意向だったらしい。しかし、同時にミイミツアーのライブDVDのリリースも決まっていた。ということは、実質的に同じ内容のものを、同時期に、2作品提供することになる。それはファンに申し訳ないと思った岡村靖幸が考えたのが、ミイミツアーの音源を駆使し、既存の5曲にリミックス・リアレンジ、さらにボーカルも新しくしたものであり、それが本作「ビジネス」である。

一貫したコンセプトは疾走感だろうか。まるで8月の熱い日に冷たい炭酸飲料水を一気飲みしたかのようなスカッとした爽快感が味わえる。ノンストップで踊り狂いたくなるようなハイな気分を味わえるアレンジとなっている。Mステ風に言うなら「アゲうた」だ。ハードロックのように大音量で聴くとさらに盛り上がれるだろう。5曲しか収録されていないのが難点だが、1曲1曲は良質なので聴く価値は大いにあるだろう。

ajapaiで「unaffected」 全曲解説(岡村靖幸がボーカルの2曲だけ)

Midnight Wolf★★★★★
やたらと手数の多いテクニカルなドラミングと淡々とマイペースに奏でられるキーボードが怪しげに交わったイントロに乗せ、覚醒寸前の狼の声を模したような岡村靖幸の呻き声からはじまる「Midnight Wolf」。大都会東京の深夜の危ない裏の顔を曝け出したような歌詞が印象的。暴力やら犯罪やらネオン街やらチャイニーズマフィアやら、血なまぐさい光景を想起させる歌詞の世界観はまるでPSソフト「龍が如く」のよう。
忙しない程に手数が多く、夜の闇を走るようなテンポの速いサウンドは、アジャパイの真骨頂であるDJ卓上でのプレイがあってこそだろう。サビの「頑張れーよ、頑張れーよ 未熟な自分で」と「やっぱでーも、やっぱでーも 寂しい夜をジャンプ」はかなり中毒性のある秀逸なメロディであり、ついつい口ずさんでしまうこと受けあい。

大車輪★★★★
2002年にタワーレコードで限定発売(アナログ盤で)された「DAI-SHA-RING」。2002年といえば、岡村靖幸の表立った活動が極端に少なかった時期なので、当時は随分注目された曲。タイトルを「DAI-SHA-RING」から「大車輪」にし本作「unaffected」で2006年にCD化されたという経緯を持つ曲。
軽快なタッチのキーボードと全体的に洗練されウェイトの軽い感じの演奏が心地よいミディアム・ダンスチューン。晴天の空のように爽やか且つ涼やかで胸を透くようなサウンドは、岡村靖幸のソロでは聴けないタイプの曲調だろう。岡村靖幸は作詞を担当し、作曲と編曲は他人が担当している。だからこそ、岡村靖幸らしからぬ風流な爽やかさが実現しているのだろう。
注目すべきは「茶髪のブランド命のにーちゃん 女を絶対泣かせるな」という歌詞。やや上から目線で若者を諭すようなこの歌詞はちょっと背伸びをして書いているような気がする。自分の曲の歌詞には、ウジウジしていたり、抽象的だったり、切なくなるとすぐに屋上に向かってしまうような情けない歌詞が多いのに、提供となると年相応の立派な歌詞が書ける岡村靖幸は、なんだかんだで20年選手のベテランでありプロだ。


総評★★★★
2006年にリリースされたajapai(アジャパイ)の「unaffected」。ゴスペラーズやm-floなどと並び岡村靖幸はヴォーカルと歌詞担当で上記の2曲に参加している。2006年といえば、岡村靖幸は塀の中である。そのためクレジットに多少の配慮がなされているようだ。
上記の2曲はどちらも作詞のみの参加だ。作曲はT、MORI、編曲:ajapaiが担当している。故に岡村靖幸がソロで作る曲とは少しばかりタイプの異なる曲調となっているが、どちらも名曲である。特に「Midnight Wolf」は一時期ヘビーローテーションで繰り返し何度も聴いていたほど個人的にはお気に入りの曲だ。
一応説明しておくとajapaiとは2003年に行われた全国ツアー「フレッシュボーイツアー」のメンバーだった人である。ピチピチのTシャツを着てDJ卓をいじっていた人である。ライブDVD「シンポジウム」の音(往年の岡村靖幸の楽曲をクラブミュージックテイストにアレンジした音)が好きな人ならこのアルバムも楽しめるだろう。

岡村靖幸 お絵かき

お絵かきエディターで絵を描くのは、思いのほか楽しい。絵が苦手でも、意外と描けるもんだなあ。マウスで描くのはちょっと不自由で難しいが色を自由に塗れたりいろいろと修正できたりするのは、紙とペンでは不可能だし、便利だな。鳥山明が手描きをやめた気持ちも今なら分かるような気がする。みんなもやってみるといいと思う。おすすめ。ということで、今日も懲りずにお絵かきしてみた。今回は岡村靖幸をいくつか描いた。

まず、「はっきりもっと勇敢になって」のジャケットを描いてみた。
はっきりもっと

随分と愛想のない顔になってしまった。なんか「レベルE」の1巻でごみバケツのなかに閉じ込められた死体みたいな顔だな。分かりにくい例えだけど…。
今度は笑ってる岡村靖幸を描こうと思い、サードアルバム「靖幸」のジャケットを描いてみたのだが…
急遽TOSHIに

XJAPANのTOSHIになってしまった。岡村ちゃんを描いていたつもりなのだが、黒目を描いた瞬間「あれ、TOSHIに似てる」と思い急遽あごをシャープにしてみると、正真正銘TOSHIになってしまった。洗脳騒動があったころのTOSHIだな、これは。その当時にピンクのジャケットは着ないだろうけど、まあ仕方がない。
もう一回、「はっきりもっと勇敢になって」のジャケットの岡村靖幸を描いてみた。
岡村靖幸

前よりは上手く描けたと思う。特に黒ネクタイ。
最後は「(E)na」のPVの岡村靖幸を描いてみた。
かっこEna

左手がグニャグニャになってしまったけど、全体的にナルな感じが漂っていて岡村ちゃんらしい。



お絵かき

FC2の編集画面には「お絵かきエディター」というツールがある。PCの画面上でマウスをゴシゴシ動かすだけでお絵かきが出来るという、まあ、ありがちな機能である。なんとなく、これを使い岡村靖幸を描いてみた。
2003年頃

一応2003年ごろの岡村靖幸である。ロンゲで強めのパーマをあてていた頃の岡村ちゃん。自分で言うのもあれだけど、何も見ないで5分程度で描いた割には上手だ。靖幸の素っ気無い感じの目元が少し似てる。いやっ、客観的に見たら下手だけどさ、自分の絵のレベル(相当下手)を考えればかなり上手くかけているほうだ。
予想外に上手く描け、気を良くした僕は岡村ちゃんに続きXJAPANのHIDEを描いてみた。
snap_jyanpu123_200861185739.jpg

1989年ごろのHIDEである。デビュー間もない頃の扇状に髪を立てていた頃のHIDE。これ自分で言うのアレだけど激ウマじゃね?口の具合が凄く上手に描けてる。どうみてもHIDEだ。これは客観的に見ても上手い方だろう。
知らぬ間に絵の才能が開花したのかもしれないな………。岡村ちゃんにHIDEと来たら次はやはりハンターハンターを描くしかないだろう。単行本24巻の207ページを見ながらネフェルピトーを描いてみた。
snap_jyanpu123_200861195455.jpg

撃沈である。やっぱり2次元は誤魔化しが利かないなあ。こんなの全然ピトーじゃない!こんなふっくらしていないし、何よりも狂気が感じられない。自分で書いた絵だけど、なんか見てるとむかつく顔だな。カメラ目線だし。
納得がいかないので24巻・162ページのピトーを描いてみた。

snap_jyanpu123_20086121380.jpg

今度は割と上手に描けた。目の感じが巧い具合にピトーの狂気を醸し出しているし(本当は考え事をしているコマなのだが)ふっくらしてないし。…なんか上手に描けると妙な達成感が得られるな。しょこたんの気持ちが少し分かったような気がする。

追記
snap_jyanpu123_2008622467.jpg

ヒソカ・10巻165ページ

岡村と卓球で「The Album」 全曲解説

1. the splder ★★★
異空間に紛れ込んだようなコスモス的なサウンドから唐突にはじまるオープニングナンバー。「今の俺の表情」や「夜の猛獣」など印象的な言葉を羅列するように並べる岡村靖幸のセクシィボイスが得体の知れないワクワク感を煽る。徐々にノイズが混じり最後は砂嵐のようにノイズだけになり2曲目へ移行する。

2. rock'n roll slave ★★★
1曲目とは打って変わり、親しみやすいディスコナンバー。石野卓球の影響と思われるテクノやノイズが混じっているもののキャッチーさは失われていない。テクノが苦手な人でも許容できる範囲で巧く暴れているといった感じ。

3. new wave boy ★★★★
「come baby」のリフをベースにしたファンクとテクノの融合曲。サビでは岡村ちゃんと石野卓球が一緒に声を合わせ同じメロディを歌っている。岡村・卓球がユニゾンで歌っているのはこの曲だけ。なぜだが妙に微笑ましい。

4. come baby2 (meet you@hardrock cafe) ★★★
どこかのスタジアムで行われているロックコンサートの歓声のようなSEからはじまる「come baby2」。ややロック調のインストである。XJAPANのライブの「HIDEの部屋」でHIDEがストリップの姉ちゃん方と一緒に戯れている時に流れていそうインスト。

5. funky pink rotor ★★
Lipps Inc.の「Funky Town」を彷彿とさせる陽気であっけらかんとしたピコピコサウンドとふわっと入ってくるヘヴィで不穏なギターがマッチしている。ヴォーカルは卓球。

6. adventure (e-pop mix) ★★
ヴォーカルを過度に加工しているため、岡村・卓球のどちらがボーカルなのかが分からない。全体的なアレンジもぼやけており聴いていてあまりすっきりしない。ビジネスバージョンや本作のボーナストラックに収められているj-pop mixバージョンの「adventure」は名曲だが、このアレンジの「adventure」では本来有しているはずの輝きが伝わらない。

7. abnormal frequency ★★★
サビの歌詞やメロディが、井上陽水の「カシス」というアルバムに収録されている、「恋のエクスプレス 」「イミテーション・コンプレックス」あたりの雰囲気と非常に似ている。2007年に行われたタワーレコードのインストアライブで井上陽水の「ワインレッドの心」を歌っていたし、案外この曲はい陽水にインスパアされて作ったのかもしれない。

8. alfa inn ★★★
2007年の告白ツアーのセットリストの2曲目に披露された「alfa inn」。これにより、「The Album」の作品の中では「come baby」「adventure」に続く知名度を獲得した曲といえる。エレクトロニックなサウンドにボソボソと何を言ってるんだかよく聴き取れない(「The Album」には歌詞カードがない)ボーカルで始終歌っている。

9. come baby ★★★★★
シングルとしてリリースされた「come baby」。「岡村と卓球」名義でリリースした曲の中で、もっともアグレッシブで完成度が高い出来に仕上がっており文句なく本作における代表曲。エロス全快でねっとりとセクシィなボーカリゼーションはソロの岡村ちゃんとは一味違うエロスであり、そこはやはり石野卓球の影響なのだろう。「冷たく見下してよ いじわるく笑ってよ」という超ドMな歌詞がこれほど違和感なく馴染む曲はそうはないだろう。

10. eclipse ★★
地球の壮大な自然をテーマにNHKが制作したドキュメント番組のBGMとして流れてそうな幻想的な曲。俯瞰し悟りを開いたような感じのスローなインスト。ヒーリングミュージックのような癒し系であり、故に眠くなる。

11. turtels have short legs ★★★★
ビートルズの「オブラディ・オブラダ」と似た曲調の陽気で愉快なナンバー。無邪気というか何も悩みがないような声で歌われる卓球の声が印象的。当たり障りのない爽やかな曲だが曲の中盤で岡村靖幸が変なシャウトをしながら登場しすぐにフェイドアウトするのが面白い。英歌詞だからかもしれないが、曲のニュアンス(あるいは肌触り)は100%洋楽である。

12. ウキウキWATCHING ★★★
ラストを飾るナンバーは「笑っていいとも」のOPで歌われる「ウキウキWATCHING」のカバー。この国民的スタンダードナンバーを岡村・卓球の悪ガキ二人が好き勝手にアレンジしまくっている。ふざけた感じが良い。サザエさんのエンディング曲を聴いた時の寂しさが襲ってくるようなセンチメンタルなアレンジとなっている。ボーカルは加工されているため岡村・卓球のどちらが歌っているかは分からない(どちらも歌っていないかもしれない)が最終曲の位置に妙にハマっている。

13. adventure (j-pop mix) ★★★★★
ボーナストラック1。6曲目のe-pop mixバージョンより遥かに聴きやすいアレンジとなっている。ボーカルに施されたエフェクトは外されサウンドはクリアになっている。万人の耳に馴染みやすく聴きやすいから〝j-pop mix〟なのだろうか。もしや皮肉?

14. come baby (yasuyuki okamura remix) ★★★
ボーナストラック2。ビジネスバージョンの「come baby」のテンポを遅くし、ねっとり感をよりフューチャーしたアレンジとなっている。途中のギィギィという軋むような音が、良いアクセントになっている。


総評★★★
あの岡村靖幸とあの石野卓球がタッグを組みコラボレーションした記念すべきアルバム、その名も「The Album」。サウンドはかなり卓球色に染まっている。テクノやらエレクトニックやら80年代的ディスコやらの音になっている。負けじと岡村側は持ち前のファンクやら天性のメロディメイクやらをぶつけ肉薄しているものの、サウンド面では石野卓球側に強いイニシアチブが置かれているように思う。しかし、ヴォーカルの殆どは岡村靖幸が取っているので、靖幸ファンが購入しても決して損はしないだろう。

「The Album」は購入してから一度聴き、あまり好みではなかったのでそれ以来全く聴いていなかったのだが、今回上記の全曲解説を書くにあたり何度か通して聴いてみると、意外とポップなアルバムであることに気付く。特に11曲目の「turtels have short legs」は良い。こんなポップな曲が収録されていたなんて知らなかった。また、M2、4、8辺りは、一見がっつりテクノでとっつき難そうな曲だが繰り返し聞くと愛着がわき、ポップに聴こえてくるから不思議だ。
コアで変態でエロスな中年オヤジだけど抜群な音楽的才能に恵まれた岡村靖幸と石野卓球。これほどまでに濃ゆいコラボレーションはこの先そうはないだろう。聴いて損はないはず。

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第332回:10月12日
ツイッターを先取りした「サブカルの戯言」も本日にて終了。332回の戯言のご愛読ありがとうございました!!
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