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太宰治で「人間失格」

DSCF0493.jpg今、爆発的に売れている古典文学といえば太宰治の「人間失格」だ。6月下旬に表紙を小畑健のイラストで新装したところ売れに売れ、たったの約1か月半で7万5000部のセールスだそうだ。これは凄い。とにかく本が売れない昨今、特に文学小説は売れない。芥川賞受賞の小説でも4000部程度しか売れないらしいのに、古典文学が7万5000部だ。

画像を見れば解かるようにこのイラストは「デスノート風」だ。この青年の髪の色を黄色にすればそのままキラだ。ちなみに、この表紙のキラ風の青年は冒頭の「はしりがき」で紹介される3枚の写真の内の一枚をモチーフに描かれたものだと思われる。その写真が具体的のどのような文章で紹介されているかというと(以下引用)

高等学校時代の写真か、大学時代の写真か、はっきりしないけれども、とにかく、おそろしく美貌の学生である。しかしこれもまた、不思議にも生きている人間の感じはしなかった。学生服を着て、胸のポケットから白いハンケチを覗かせ、籐椅子に腰かけて足を組み、そうして、やはり、笑っている。(中略)かなり巧みな微笑になってはいるが、しかし、人間の笑いと、どこやら違う。


というような文章だ。

足は組んでいないが「胸のポケットから白いハンケチを覗かせ」はクリアしているし、なによりも「人間の笑いと、どこやら違う」な感じが的確に描かれている。このニヒルな感じの微笑みはデスノートの小畑健にしか描けないだろう。しかし「人間失格」とは太宰治の自伝的小説だ。つまりこのキラ風の青年はそのまま太宰治ということになる。この本の最初のページには太宰治本人の白黒写真がいくつか紹介されているわけで自ずとギャップが生じる。太宰治は、まあ、男前な方だが実写と二次元との間には悲しいものがある。

それにしても、この太宰治の人間失格と小畑健のDEATH NOTEのコラボは絶妙だ。これを考えた人はキラ並に頭が冴えているのではないか。太宰治に興味の無い人でも「人間失格」というタイトルはどこかしらで見聞しているだろう。また、短編の「二十世紀旗手」のなかの「生まれて すみません」という(身も蓋も無い)名フレーズも有名だから一度は耳にしたことがあるだろう。故に、いつもは漫画ばかり読んでいる人でも太宰治の「辛辣に苦悩ばかりしていて堕落的などうしようもない人」な感じは日本に住むものなら直感的に理解できると思う。そのような、太宰治のイメージとデスノートはあまりにもマッチしている。また価格も257円と異様に安い。文字も大きく読みやすい。そりゃ売れるわ。

ただ思うのだが、小畑健イラストの人間失格を買ったという時点でもう満足なのではないか。7万5000部売れているが7万5000人が「人間失格」を読了したとは思えない。実際にブログで検索しても「小畑健の人間失格買ったぜ」という記事は山ほどあるが、古典青春文学である「人間失格」の感想を書いている人は殆ど居ない。というか僕が見た限りでは一人もいなかった。オブジェ的な効用で既に満たされているのかもしれない。

ということで、本ブログではちょっとだけ「人間失格」を読んで思ったことを書こうと思う。

高校時代にはじめて人間失格を読んだ時の感想は、一言で済ますならば、YOSHIKIが言うところの「破滅への美学」な感じの小説だなぁ、だった。自殺したり薬物中毒な自分のことを「人間失格」と言ってしまうそんな自分に酔っているような印象を受けた。どこかしら演出的な部分があるような(YOSHIKIが激しいドラミングの後、失神するのは半分演出であるのと同じように)気がした。結局はナルシストなんだろうな、と高校時代は思った。

今回改めて再読して感じたことは基本的には高校の頃の感想と殆ど変わらない。自分の「破滅への美学」を大衆に見せつけたいんだろうなって感じだ。僕はあまり太宰治の小説が好きではないからこんな風に思うのかもしれないが。

太宰治の娘が「人間失格」の巻末に寄せた文章にある「男の強がりを感じずにはいられない」や「極めて正常なのに、狂人を装い~」辺りの文章が人間失格を評する場合、的を得ていると思った。本当に狂人ならば「人間失格」と自分を評しながらもあとがき(エピローグ)では登場人物の一人に「…神様みたいないい子でした」と言わせたりはしない。太宰はブンガクする前に、単純に読者が楽しめる小説、または売れる小説を何よりも書きたかったのではないのか。

付記
「人間失格」の感想の引き合いにYOSHIKIが自然と出てくる自分こそ真の人間失格なのかもしれない。


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