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たまで「さんだる」

1990年7月にリリースされた、たまのメジャー1stアルバム『さんだる』。たまのアルバムのなかでは一番売れたアルバムだ。89年に出演したイカ天で世間の注目を浴び、1990年の5月にリリースした「さよなら人類」は驚異的なセールスを記録。当時のたまを巡る動画をいろいろと見たのだが、扱われ方がまさに「時の人」である。最近でいえば小島よしおの様なものだろうか。社会現象としてNHKで取り上げられたり、その年の現代用語の基礎知識に「たま現象」という言葉が掲載されたり。たまは、1990年(あるいは昭和から平成の移行期)を象徴するバンドなのだ。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの1990年にリリースした「さんだる」。売れないわけがない。

たまは非常に変わったバンドだ。メンバーは4人。ドテラを着たきのこ頭の、知久寿焼。「さよなら人類」の作詞作曲をした、柳原幼一郎。松本人志に「たまのランニング」と命名された石川浩司。たまがアマチュア時代ベースを募集した際にベースが弾けないのに応募し強引にメンバーになった滝本晃司の4人だ。4人ともそれぞれ作詞作曲をしヴォーカルをとる。普通のバンドはヴォーカル担当者は一人だが、たまはもともとソロシンガーの集まりだから自然とそうなったようだ。1990年当時は「日本のビートルズ」なんて称されていたようだが、みんながヴォーカルを取るという意味では「日本のビーチボーイズ」の方が相応しいと思う。その際のブライアンウィルソンは誰がなんと言おうと知久寿焼だろう。

たまを熱心に聴くようになって割と早い段階で気づいたことは、知久寿焼の唯一無二ぶりだ。基本的にたまのメンバーはみんな希有な才能の持ち主なのだけど、知久寿焼はちょっとずば抜けている。才能の塊だ。天才といっても決して大げさではないと個人的には思う。知久寿焼の歌の世界観は、「三丁目の夕日」的な懐かしい日本の風景とつげ義春的ないわゆるガロ系のアングラテイストを足して二で割った感じだ。一見、古き良き時代の純日本的で和風な世界観なのだがその裏側にはびっしりとおぞましい程にトラウマの種子が内包されている。はっきり言って怖い。でも圧倒的な凄みがある。

以下、「さんだる」に収録されている曲を各メンバーごとにわけて感想を書く。

さんだるに収録されている知久寿焼の曲は「らんちう」「方向音痴」「おるがん」「ロシヤのパン」の4曲だ。どの曲も一聴しただけで知久寿焼の曲だとわかる。スローテンポでどこか悲しげな歌だ。サウンドの基盤はフォークなのだが、石川浩司(ランニング)が曲中にいきなり発する奇声やらゴスペラーズも驚くのではないかというほどの秀逸なハーモニーやら、楽器にアコーディオン・縦笛・桶(ドラム代わり)などを使用したりやらでいろんなものが化学変化し結果的にプログレッシブ・フォークとなっている。一筋縄ではいかない独特の世界観が展開されていている。これは一度はまるとなかなか抜け出せないだろう。それくらい吸引力の強い曲ばかりだ。

柳原幼一郎が「さんだる」で作詞作曲した曲は「さよなら人類」「オゾンのダンス」「どんぶらこ」「れいこおばさんの空中遊泳」の4曲。まず触れるべき曲はやはり「さよなら人類」だろう。たまに特に関心のない人達にとっては「たま=さよなら人類」であるし、場合によっては「さよなら人類>たま」といった図式があり得ることもあるかもしれない。「さよなら人類」は名曲だが、たまをある程度知ってしまった現在の僕にとっては、複雑な曲でもある。結果としてこの曲の存在によって一発屋のレッテルを貼られるようになったわけだし。さよなら人類はメロディがキャッチーでいわゆる売れる要素のつまった曲だがもっと優れている点は歌詞だ。歌詞は最初から最後まで全編に渡って暗喩によるメタファーが潜んでいる。一見すると意味不明な、まるで井上陽水が書くような種類の歌詞にも見えるが、どうやらこの曲には辛辣なメッセージが隠されているようだ。歌詞の意味について書かれたサイトはいくつかあるようだがそれぞれに解釈は微妙に異なるようだ。ただ一つ言える事は、楽しげなメロディとは裏腹に歌詞は絶望的かつ悲観的だということだろうか。柳原幼一郎の作る曲は大衆向けのキャッチ-なものが多い。アングラ思考の他のメンバーと比べると随分売れ線の曲が多い。「オゾンのダンス」は「さよなら人類」の次に売れた曲だと思われる。先日カラオケで歌ったが爽快な曲だ。「れいこおばさんの空中遊泳」も歌詞はちょっと意味不明なのだけど明るい陽気な旋律だ。たまのメロディメーカーである。

たまのランニングこと石川浩司の曲は「学校にまにあわない」の1曲だ。1曲だが10分以上ある長い曲だ。石川浩司はつげ義春の熱烈なファンであるらしいが、この曲はつげ義春イズムによるシュールリアリズムが存分に発揮された曲のようだ。曲の構成も落ち着いたトーンで歌ったり、激しく絶叫しながら歌ったり、演劇のような語りあるいは朗読が入ったり、様々な構成が練られている。カオスという言葉がこれほど違和感なく馴染む曲は「学校にまにあわない」の他にないだろう。

ベースの滝本晃司の曲は「日本でよかった」「ワルツおぼえて」の2曲だ。滝本晃司という人はたまのなかではかなり目立たないキャラだ。ルックスも普通だし、作る曲もスローテンポのバラードが多い。声は非常にダンディで個性的な声だが歌唱力は正直言って…だ。「さんだる」に収録されている上記の2曲は個人的にあまり好きな曲ではない。殆ど聴いていない。滝本晃司に関しては「さんだる」以降の方が活躍している。後には名曲「海にうつる月」や劇場版ちびまる子ちゃんの挿入歌「星を食べる」の作詞作曲をしているようだ。またアーティスティックなメンバーのなかで唯一の元社会人であり、たまの事務所の社長をしているなど実務的な部分で重宝されている人でもある。

「さんだる」はメンバーがそれぞれ作詞作曲をしているので(たまのアルバムは全てそうだが)自ずとコンセプトアルバムとしての統一感は希薄だ。ただ、たまのメンバーは皆一様にアングラ風味の怪しげな風貌であるから映像で見ると、どの曲でも妙な一体感がある。たぶんたまがエグザイルの曲を歌ったとしても、たまの色に完全に染めてしまうのではないかと思うくらい強烈なオリジナルが醸し出されている。これほどまでにオリジナルなバンドはたま以外にはなかなか居ないと思う。今の時代、マイナー以外の何者でもない『たま』だが再評価するに値する偉大なバンドだと僕は思う。

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