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岡村靖幸で「OH!ベスト」 全曲解説

ハレンチ(Thank you Takabashi-MIX)★★★★
96年にリリースされた「ハレンチ」は、当時話題になっていた女子高生とおっさんによる援助交際について岡村靖幸なりの視点で切り込んだ意欲作。社会問題についての楽曲のため、当時は社会派と呼ばれていたとか。援助交際をやっている人たちに対して批判や更生を促す歌ではなく、援助交際という汚れた行為に思いを馳せ、ひたすらコンフューズ(混乱)する岡村靖幸自身の複雑な心持が歌われている。なぜそんな行為に走ってしまうのかを嘆いた歌であり、そういう意味では社会派ではない。「なぜ?」という感情を表現した歌だ。しかしそれ故、強烈なインパクトがある。援助交際をやっている人に向かって「もっと自分を大切にしよう。お金はちゃんと働いて稼ごう」など当たり障りの無い一般論で諭すより、「ハレンチ」で岡村靖幸の歌う「俺はムード派だから、援助交際なんて、わかんないよ、たまんないよ。でもあなたに情がでる」みたいな内容の方が同じ目線にたった上での親身な優しさに満ちている気がする。
サウンドはアップテンポでダンサブル。「ステップUP↑」を彷彿とさせるほどノリの良い曲に仕上がっている。ハレンチのライブ映像は「Me-imi Tour 2004」にのみ収録されているのだが非常に盛り上がっている。振り付けもしっかりと施されており、岡村靖幸の楽曲におけるアゲうたとしても秀逸。

セックス★★★
同じフレーズが何度もしつこく焦らすようにファンクに繰り返されるグルーヴは、まるでジェームスブラウンの「セックスマシーン」のよう。8分18秒と長い曲だが殆どは同じフレーズで歌われる「君がどんな~」という非常に卑屈な歌詞が際限なく続いている。はっきり言って病んでいる。曲構成は、一曲のなかでどんだけ音楽を展開すれば気が済むんだというほどに好き勝手にアレンジしまくっている。サウンドの格好よさに耳を奪われ、誤魔化されそうだが、歌詞はシビアだ。ロッキングオンのインタビューで語っているように「セックスはほんとに出すの悩みました。つまりあんなにネガティブな歌をシングルで出して、かつあんまり救いもなかったし」「女の人は喜ぶかなっていうのはずーっと疑問でしたね。ヤな気持ちになんじゃないか(中略)ほんとにそれが答えであろうと…知りたくない答えってあるわけじゃないですか」とリリースに際して非常に悩んだようだ。
あの岡村靖幸の歌のタイトルが「セックス」とあれば、100パーセント性交という意味でのセックスを想像しがちだが、歌われている内容は、性差やジェンダーという意味合いのセックスだ。「君があらゆることをやったところで世の中には不平等な性差がある、あん時言ったろ」というような突き放した、冷めた内容の歌詞だ。このような歌詞があるため、インタビューで「女性がヤな気持ちになんじゃないか」と話していたのだろう。実際、田島ようこ辺りが聴けば激怒するのかもしれない。ちなみにこの曲は「Me-imi」の最終曲にマシュマロハネムーンとミックスした形で収録されているのだが、そちらの方が数倍洗練された格好良いアレンジとなっている。

真夜中のサイクリング★★★★★
痛々しいほどに切ない空気感を閉じ込めたミディアムバラード。無機質に響くキーボードの寂しげな単音と幻想的でけだるいコーラス、所々ノイズのような音になるアレンジがやや前衛的な出来栄えとなっている。「真夜中のサイクリング」というタイトルからして切なく感じてしまうのは自分だけだろうか。岡村靖幸が夜中、自転車に乗っている様子を想像すると、結構哀しいものがある。夜中に当ても無く自転車に乗り、夜風に当たりながらひたすらにペダルをこぎ、背中にはじっとりと汗が。帰りはコンビニに寄り弁当と酒と適当な雑誌を買い、誰も居ない暗いマンションの鍵を開ける岡村靖幸…。実際は陽気で愉快でゴージャスな生活を送っているのかもしれないが、「真夜中のサイクリング」を聴くとこんな風な哀愁たっぷりの岡村ちゃんを想像してしまう。
「真夜中のサイクリング」がシングルとしてリリースされたのは2000年。そのため、声がややこもっている。今と比べるとまだ出ているが、ある種の前兆は十分に伺える。声帯が消耗していく過渡期の声に一層切なさが増す。歌詞に関しては名フレーズが多発している。なかでも有名なのは「自ら脇役に志願してるようなもんじゃん」だろうか。マシュマロハネムーンもそうだが、この頃の歌詞はまるで自分自身に問いかけるような歌詞が多い。


マシュマロ・ハネムーン★★★★★
マイペースに唸っているメロディアスでキャッチーなベースとエッジの利いたキレの良いリズムが絶妙にマッチした名曲。最初から最後まで一定のテンションで繰り出されるリズム隊の爽快な一体感が病み付きになる。これほどまでに心躍る曲はそうはないだろう。曲の構成はシンプルでありながら、サビを最大限に生かすためだけに作られたような秀逸なBメロの溜めと解き放たれたような高揚感が得られるサビの抜群なメロディは何度聴いても最高だ。それに乗せて歌われる歌詞が「快感 傍観 同じ夜でもどんなにするかは僕しだい 体感 直感 楽しめる二人なら星も降る」。なんて素晴らしい歌詞なんだろうか。サビ以外の歌詞は「散弾銃の隊長も母の名を叫ぶ」などを筆頭に真意の掴みにくい詩が乱立しているため、余計にサビの歌詞が真っ直ぐに突き刺さる。
「マシュマロ・ハネムーン」というタイトルの可愛らしさに呼応したかのように、アレンジもキュートでユニークなSEが挿入されていたり岡村靖幸のボーカルの裏でアニメ声の女性が一緒に歌っていたりと、非常に愛らしくカラフルな出来となっている。「ラブタンバリン」「スーパーガール」「うちあわせ」など初期作品特有のキラキラとした輝きを感じ取ることが出来る。後奏ではファンク色濃厚なリズムにいつの間にか変わる。カッティングも加わりドスの利いた低音のシャウトが聴ける。一度に二度おいしい名曲。

総評★★★★★
2001年にリリースされた2枚組みのベストアルバム。2001年までにリリースされたすべてのシングルが収録されており、岡村靖幸の入門盤としては最適なラインナップとなっている。「OH!ベスト」を置き土産に、岡村靖幸はデビューからずっと所属していたエピックソニーを離れることになる。このベストのリリースも不本意だったらしく、いろいろと愛憎渦巻くしがらみがあったようだ。「OH!ベスト」には「禁じられた生きがい」以降、コンスタントにリリースされた「ハレンチ(96年)」「セックス(99年)」「真夜中のサイクリング(2000年)」「マシュマロ・ハネムーン(2001年)」が収録されている。上記の4曲はオリジナルアルバムには収められておらず、「OH!ベスト」か「岡村ちゃん大百科」でしか聴くことが出来ない。故に「OH!ベスト」は、岡村靖幸ファンにとって重要なマストアイテムといえよう。
「禁じられた生きがい」と「Me-imi」の間には9年間の空白があるが、表舞台に現れなかっただけで、シングルのリリースとプロデュース業という形で活動はしていたようだ。これらのシングル4曲を中心にオリジナルアルバムを制作し、リリースしていたならば、間違いなく「禁じられた生きがい」を超える名盤が誕生していただろう。もったいない。

「OH!ベスト」に収録されている他の曲の解説はこちらから。
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