スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

リアル(7巻)

今さらだが去年の暮れに発売された、井上雄彦の漫画「リアル(7巻)」の感想を。「リアル」はスラムダンクの連載終了後、週刊ヤングジャンプにて不定期で連載されているバスケ漫画である。不定期といっても1年単位で見ると見事なまでに定期的だ。2001年にリアル1巻が発売されてから1年に1巻の超スローペースで毎年11月頃に発売されている。2001年に1巻、2002年に2巻、2003年に3巻…そして、リアル7巻は去年の暮れ2007年に発売。実に定期的だ。

スラムダンクと同じバスケ漫画でも「リアル」は〝車椅子バスケットボール〟だ。なので自ずとスラムダンクのような、友情・努力・勝利の3つでもって少年の心を鷲づかみにするというドラマチックなスポーツ根性物語ではない。「リアル」の主要な登場人物は3人。皆それぞれに、深刻な悩みを抱えていたり、事故で車椅子生活になり絶望していたりする。ジャンプでこんな重くて暗くて鬱な漫画を描いたら、きっと読者アンケートによる人気はあまり芳しいものにならなかっただろう。というか、それ以前にジャンプ紙上では「リアル」のようなシビアな物語はそもそも掲載されないだろう。

仮にジャンプに「リアル」が掲載されたとしたら、「友情・努力・勝利」の原則の下―――まず、戸川清春の足は治り(まるでクララのように劇的に)バスケの名門高校に転入しインターハイに出場し全国制覇するだろう。野宮はバイク事故で一生の障害を負わせてしまった山下夏見と交流を持ち、次第にお互い愛情が生まれ、「俺が夏見の足になる」的なことを言い、幸せな結婚でもするだろう。下半身不随になり人生を転落した(AランクからEランクだっけ?)高橋は捻くれた考えを改め昔のアットフォームだった頃の家庭を取り戻し、心から幸福な笑顔を見せるだろう。「友情・努力・勝利」の原則の下では、どんな人間もドラマチックで奇跡的な展開の末、ハッピーエンドになる。しかしそれは少年漫画のなかの世界の話。現実(リアル)は違う。

上記の主要登場人物3人(戸川、野宮、高橋)は皆一様に人生の軌道に乗れず、くすぶっている。リアルは2001年にはじまった漫画だから、つまり単純計算で7年間ずーっとくすぶっている。くすぶって、煮詰まって、こじらせて「ああぁーもうっ、どうすりゃいいんだよ!!」と発狂してしまいそうになる感じが「リアル」の真骨頂であり他の漫画と一線を画している点だ。

以下ネタバレあり。
最新刊「リアル(7巻)」はタイガース対ドリームスの試合を中心に物語が展開している。戸川清春が所属する弱小チームのタイガースと強豪チーム・ドリームスの試合。この試合に負けたら有望な戸川清春はドリームスに移籍する約束をしてしまう。そして激戦の結果タイガースは負ける。悔しさのあまりトイレで号泣する戸川のシーンで7巻は終わる。負けてしまったものの、戸川に関しては既に自分の道を見つけているような気がする。少なくとも「リアル」の登場人物のなかでは最も健全な道を突き進んでいるだろう。この先ドリームスに入るのかは分からないが(売り言葉に買い言葉の口約束だし)どちらにせよ、車椅子バスケとしてのトップ選手に昇り詰めるのだろう。

そんな一生懸命に汗をかき激しくスポーツしている戸川清春を見守るのは、バイク事故で車椅子生活になった元暴走族の亮。車椅子生活になってから、仲間からの連絡は途絶え、くすぶっていた亮は、戸川率いるタイガースの練習や試合を見学し驚く。練習中チームワークが乱れ喧嘩になったタイガースのメンバーを見て「障害者って喧嘩しないんじゃないのか」とか「障害者ってもっと大人しくて優しいんじゃないのか」と思い、タイガースの選手達たちは障害者の前にスポーツマンであることに心を動かされる。そして亮は自分とタイガースの選手を対比し、己を省みた時、〝障害者としての自分を認めず消していた〟ということに気付く。ここが7巻のハイライトだろうか。

野宮は「人生は地続きだ」と悟り、生きがいを感じはじめた引越しのバイト先の会社が倒産(運悪いな、野宮)。倒産の知らせを受けショック状態な野宮はその帰り道、公園のベンチに座りぼんやりしていると、頭の悪い高校生が数人で犬をいじめていた。マジックで犬に眉毛を描いたり「額に肉って書こうぜ」「肉ってベタだな」とか言ったりして…。そんな高校生を見て野宮はキレる。高校生と乱闘。野宮流血。やがて警察が来る。野宮逃げる。…相変らずくすぶっている。でも、逃亡後、血だらけになりながらも「タイガース対ドリームス」の試合会場に足を運び、亮の隣でタイガースを応援している野宮の姿はちょっとカッコイイと思った。

「リアル」における最大の問題児・高橋は、7巻には一度も登場せず。これまでいけすかない最低なヤツだった高橋は6巻の最後で号泣。読者の同情をかった。あの号泣が、良い方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか、もしくはどちらにも向かわず平行線のままなのかは分からないが、高橋がこの先どうなるのかは興味深い。山田玲司の「絶望に効くクスリ」で取り上げられた井上雄彦の回を読む限り井上雄彦はかなり熱い男のようなので、高橋の行く先にはきっと救いがあると思うけど。
高橋の活躍(活躍っていうか、なんていうか…)は、2008年秋に発売予定の8巻に期待。


スポンサーサイト

Leave a comment

Private :

Comments

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
09 11
サブカルの戯言
第332回:10月12日
ツイッターを先取りした「サブカルの戯言」も本日にて終了。332回の戯言のご愛読ありがとうございました!!
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
プロフィール

yuji

Author:yuji

リンク
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
QLOOKアクセス解析