スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ライ麦畑でキャッチャー

サリンジャーの代表作『ライ麦畑でつかまえて』を再読した。訳者は野崎孝ではなくて村上春樹の方だから正確には『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(タイトルくらい訳せよっていう)なのだけど、やっぱり「ライ麦畑でつかまえて」の往年の邦題の方がしっくり来るな。

「ライ麦畑でつかまえて」は主人公であるホールデン・コールフィールドの述懐で綴られている。口語体の独白のような文体で語られている。主人公の語りで進行して行く小説はたくさんあるが、「ライ麦」がこの手の小説の中で一線を画している点は、独白している主人公・ホールデン・コパフィールドの人間性だろう。この主人公、はっきり言って壊れている。精神が瓦解しており、故に言っていることが往々にして変だ。変なのだが小説の形態は三人称じゃないから、その「変なこと」は是正されないまま物語は進行していく。是正されないままのホールデンのでたらめな戯言を延々と聞いていると(読んでいると)なんだか妙な心地になる。ホールデンは転校する度に問題を起こし、退学になり、最終的には精神病院にぶち込まれるような問題児なのだけど、ホールデンの人間性というか魂に共感してしまうのだ。

退廃と潔癖と神経質がごちゃ混ぜになった結果「どうにでもなれ」的な言動に走ってしまうホールデン。そんなホールデンの首尾よく行かないグズグズな生き様を見れば、誰もが思春期の頃に経験したであろう、ある種の「やるせなさ」だったり「脱力感」を想起するだろう。個人的には教科書に掲載されてもいいくらいの青春文学だと思うのだが、今でもこの小説は一部の地域では禁書として扱われ、発禁処分となっている。ジョンレノンを殺したマーク・チャップマンやレーガンを射撃した犯人が「ライ麦畑でつかまえて」を愛読していたのを筆頭に、いわゆる「頭の逝かれた奴」の愛読書となっている側面があるのも事実だ。確かに「頭の逝かれた奴」が共感してしまう部分もあるとは思うのだけど、それよりも世界中のティーンの代弁の書としての功績の方が遥かに大きいと思うのだが。

そういえば、ジョンレノンを殺したマーク・チャップマンだけど、噂によると(ガセネタの可能性大だが)今年中に初の仮釈放になるらしい。28年ぶりのシャバってどんな感じなのだろう?想像がつかないな。シャバに出た途端、熱狂的なジョンレノンファンに殺されそうな気もするな。一生刑務所に入っていた方が安全かもしれない。まあ、でも、人殺しに走るほどの酔狂なジョンレノンファンが2008年現在に居るのか疑問だけどね。

最後に村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」について少々。村上春樹は「翻訳というものには鮮度のようなものがあり、古典文学の名作たちは定期的に新訳されるべきだ」みたいなことをどっかの本に書いていた。その言葉を実行するべく、近年の村上春樹は、カポーティの「ティファニーで朝食を」チャンドラーの「ロング・グッドバイ」フィツジェラルドの「グレートギャツビー」を翻訳した(ちなみにこの3作は村上春樹がことあるたびに自身が最も影響を受けた小説として挙げている作品だ)。
思うのだが、…古典文学に鮮度は必要か?。ってか現代的な鮮度がないから古典なのではないか。今時の言葉遣いに新訳された古典文学には、読みやすさや言葉の不自然さを失くした代わりに当時の鮮度を劣化させているような気がする。もちろん、村上春樹が訳せば売れるし、何よりも読みやすいし(この人が訳すと不思議なことに、どんな文章でも村上春樹の文章になる)、読者にとっては「良いこと」の方が遥かに多いのだけど、古典文学独特の旧仮名遣の読みづらさも味があって僕は好きなんだけどなぁ。

●今日の写真
ho-rudenn
サリンジャーはこの本に掲載される予定だった著者解説を断ったらしい。もう90歳近いのに今だに頑固なんだな。
スポンサーサイト

Leave a comment

Private :

Comments

はじめまして
初めて書き込みます。ちょくちょく拝見しております。また遊びにきます☆
Posted at 2008.10.24 (01:18) by ハナエ (URL) | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Posted at 2008.10.25 (04:09) by () | [編集]
・ハナエさん
はじめまして。ありがとうございます。

・非表示でコメントくれた方
情報ありがとうございます。見ましたよ。食べ物の話題ばかりで笑ってしまいました。
Posted at 2008.10.27 (21:10) by yuji (URL) | [編集]
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
04 06
サブカルの戯言
第332回:10月12日
ツイッターを先取りした「サブカルの戯言」も本日にて終了。332回の戯言のご愛読ありがとうございました!!
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
プロフィール

yuji

Author:yuji

リンク
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
QLOOKアクセス解析