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井上陽水 アルバム解説

井上陽水の20枚程度あるアルバムのなかから、おすすめ作品を何枚か紹介。

陽水II センチメンタル(1972年12月10日)
アンドレ・カンドレという芸名でデビューしたものの全く売れず、歌いたくもない演歌調のダサい曲を歌っていた陽水。そんな陽水を救ったのがポリドールに移籍してから発表した「夢の中へ」。この曲がスマッシュヒットし、井上陽水が注目されはじめた時期にリリースされたのが「陽水II センチメンタル」。「センチメンタル」というタイトルからも察しがつくように初期の陽水は暗くてネガティブなフォーク歌手であった。本作にはこれ以上ないほどに暗い曲が揃っている。「たいくつ」や「帰郷(危篤電報を受け取って)」の暗さは相当なもの。そんな暗い曲たちを、細くて心持震えているかのようなか細い声で繊細に歌っている。陽水といえば美声でダンディな声というイメージがあるが、初期はとにかく「この人大丈夫?死んじゃうんじゃないの?」みたいな、儚さで満ちていており、それが初期の陽水の魅力だったのだ。収録曲も名曲ぞろいで、尾崎豊がアマチュアの頃にカバーした「夏まつり」、もっくんがカバーした「東へ西へ」、そして個人的に陽水のなかで一番の名曲だと思う「能古島の片想い」が収録されている。

陽水ライヴ もどり道(1973年7月1日)
シングル「夢の中へ」がヒットし、それに続けとばかりにリリースされたセカンドアルバム「陽水II センチメンタル」も大ヒット。陽水のまわりがにわかに騒がしくなりはじめ「いまが千載一遇の売れどきだ」と考えたポリドールはサードアルバムのレコーディングを急かした。しかし、なかなか出来あがらないため、待ちきれずにリリースされたのが本作「陽水ライヴ もどり道」というライブアルバムである。ライブ自体はとても短く、演奏もバンドではなく弾き語りだ。まるで流しのよう。この頃の陽水の病的なまでに繊細で儚い感じがヒシヒシと伝わってくる。近年の陽水からは想像できない程、ナヨナヨしたMCが聴ける。歌を歌っているときは声がガンガン出ているのだが、MCの声はひどく小さい。緊張しているのか声が震えている。MCの内容も「先日父が亡くなりましてねぇ…」と客もリアクションに困るであろう不幸話を長々と話し、最後の方は感極まって泣いている。しかも泣いた後に歌った曲が「人生が二度あれば」。暗い、暗すぎる。でもこの暗さが好きだ。収録曲には初期の代表曲が網羅されている。「傘がない」「東へ西へ」「夢の中へ」「いつのまにか少女は」そして本作でしか聴くことが出来ない「星(終りのテーマ) 」などが収録されている。急遽発売された「陽水ライヴ もどり道」はライブアルバムでありながら売れまくった。そして本作から5ヵ月後に満を持してリリースされたサードアルバムがあの「氷の世界」なのであった。

氷の世界(1973年12月1日)
オリジナルアルバムとしては3枚目。日本初のミリオンセラー・アルバムである。シングルでのミリオンセラーはあったみたいだが(主に演歌)アルバムのミリオンは陽水が初。快挙である。このアルバムの凄い所は、「芸術は爆発だ」的な訴求力に尽きるだろう。とにかくテンションが終始張り詰めている。最初から最後まで圧巻のクオリティである。タイトルチューン「氷の世界」の躍動感と疾走感がほほとばしった音からは、もはやフォーク歌手・陽水の姿は存在しない。ファンクのようでもあり、ロックのようでもあり…、ジャンルレスな陽水ワールドが広がっている。「氷の世界」以外の曲は「桜三月散歩道」「白い一日」「心もよう」「自己嫌悪」「おやすみ」などフォークソングテイストな曲が多い。「氷の世界」があまりにも前衛的でインパクトのある作りだが、それ以外は堅実なファークソングが占めている。このバランスの妙が100万枚突破の要因なのだろう。

二色の独楽(1974年10月1日)
「氷の世界」で“時の人”となった陽水。「氷の世界」の次のアルバムである「二色の独楽」はもちろん売れまくった。ロサンゼルスでレコーディングされた本作は35週間以上BEST10にランクイン。前作「氷の世界」と比べるとややフォーク寄りになっている。2曲目の「夕立」には「氷の世界」の余韻が少し残っているように思うが他の曲はフォーク系である。「野イチゴ」「ロンドン急行」「月が笑う」などシンプルでありながらも秀逸な小品といった佳作が多い。バリバリフォークな陽水を楽しめるのは、本作が実質的に最後であり貴重だ。一応5枚目の「招待状のないショー」もフォークテイストが残っているが現在はなぜか手に入らないし。ナイナイのANNで話題になった「ゼンマイじかけのカブト虫」も収録されている。

white(1978年7月25日)
大麻で捕まった後にリリースされた6枚目のアルバム「white」。このアルバム、はっきり言って凄い。個人的には陽水の全作品の中で一番の名盤だと思う。しかし、このアルバムは売れなかった。陽水ファンの間でも特に評価の高いアルバムではない(なぜだ!?)。これほどまでに素晴らしいのに。曲調は初期のようなフォークテイストではないのだが、だからといって、80年代のようなシンセなピコピコサウンドでもない。70年代的な生の楽器が鳴っていて普遍性があるように思う。留置場で作ったといわれる「青い闇の警告」にはかなり共感する歌詞がバンバン出てくる。、まるで自分のことを歌ってくれているかのような錯覚に陥るほど共感する(歌詞を見れば分かるが「青い闇の警告」に共感するって相当病んでるけどね)。タイトルチューン「white」や「Bye Bye Little Love」など屈指の名曲が揃っている。個人的にこのアルバムを聴いて救われた部分があるなぁー。それくらいの個人的名盤。

LION & PELICAN(1982年12月5日)
相変らず人気低迷期だったようだが、80年代前半に発表した作品は今振り返ってみると意外にも充実している。特に「LION & PELICAN」は陽水の代表作に挙げられるほどの名盤。現在でもライブでは必ず歌われる「とまどうペリカン」や「カナリア」が収録されている。またある意味陽水の代表作となっている「リバーサイドホテル」も収録されている。「ワカンナイ」や「背中まで45分」などからは初期のセンチメンタルな陽水ではなく、いわゆる近年の「なんだかよくわからんが、ダンディなオッチャン」的な陽水が姿を見せている。しかし残念なことにアレンジはダサダサな80年代サウンドなので今聴くと正直キツい。

Negative(1987年12月16日)
Negative、というタイトルからは初期の儚い陽水を感じずにはいられないが、内容は別に後ろ向きな曲というわけではない。なんで「Negative」なんてタイトルにしたのか疑問なほどだ。相変らずの懐古的な80年代サウンドなのが残念だが、曲は良質。本作に収録されている曲で有名な曲は1曲もないし、本作からベストアルバムに採用されている曲も無い。非常に地味な作品だが、実験的で面白い曲が多数ある。「We are 魚」やタイトルチューンの「Negative」は今風にアレンジすれば結構化けると思う。個人的には「全部GO」の「儚いで まどろんで 寂しんで それを楽しんで」という歌詞に衝撃を受けた。なんて柔軟な日本語なんだ。

ハンサムボーイ(1990年10月21日)
90年代に入り、一発目のアルバム「ハンサムボーイ」。このアルバムはなんと言ってもジャケットでしょう。思わず笑ってしまう。ジャケ買いしてしまいそうなほどの強烈な吸引力がある。陽水が微笑んでいるだけなのに、なぜこれほどまでに笑いがこみ上げて来るのだろう。初期の陽水にはなかった、“奇妙な陽気さ”という唯一無の属性が陽水に備わってきたのもこの頃からだろうか。特筆すべきは「少年時代」だろう。いまや音楽の教科書にも掲載されているほどの国家級の名曲である。他にも後に「ゴールデンバッド」に収録されることになるギラギラと怪しげにテカった陽水流のロック「ライバル」や友近がカバーした「Tokyo 」。隠れた名バラード「自然に飾られて」など名曲多数。

UNDER THE SUN(1993年9月15日)
90年代に入ってからの陽水は陽気だった。しかし、持ち歌には暗い曲が多かった。そのためライブをやってもイマイチ盛り上がりに欠けた。「ライブで盛り上がる曲が必要だな」と考えた結果制作されたアルバムが本作。1曲目からリズミカルで爽快なロックではじまる。後の、横文字のシュールな言葉の羅列で埋め尽くされる歌詞もこのアルバムからはじまったように思う。昔のような暗くてセンチメンタルな陽水は、このアルバムを最後に完全に消滅したと言える。7曲目に収録されている「鍵の数」はココロのベスト10に入る名曲。

GOLDEN BEST(1999年7月28日)
90年代の陽水にはそれほど興味がない。90年代前半には音楽の教科書に掲載された「少年時代」や陽水のシングル史上最も売れた「Make-up Shadow 」などの大ヒット曲はあるものの、それほど惹かれない。90年代から、やたらと歌詞に横文字が入るようになり、それに伴い歌詞がシュールになり…。そんな個人的にパッとしない90年代の陽水だが、注目すべきは200万枚以上売り上げた2枚組みのベストアルバム「GOLDEN BEST」だろう。初期の曲から近年の曲まで、安全地帯との共作から奥田民夫との共作まで、フォローされている。僕も「GOLDEN BEST」から陽水にハマったクチなので、思い入れが強い。

カシス(2002年7月24日)
2000年代の陽水のオリジナルアルバムは(今の所)「カシス」と「LOVE COMPLEX」の2枚しかリリースされていない。まあ、そのかわり2000年代の陽水はご存知のようにライブをやりまくっているわけだが。「カシス」は名盤なのだろうか?思い入れが深い故、よくわからない。少なくとも「LOVE COMPLEX」よりは優れているかな。僕がはじめて行った陽水のライブは2002年の『Blue Selectionツアー』だった。このツアーでは「カシス」のなかからの選曲が多かったため事前に何度も聴いた。だから、「カシス」を聴くと2002年のまだ僕が大学1年生だった頃の思い出がドクドクと溢れ出る。なので今でもよく聴いている。フジテレビのドラマ「ランチの女王」の挿入歌「森花処女林」や岡村靖幸の「モンシロ」を彷彿とさせる「この世の定め」は名曲である。

LOVE COMPLEX(2006年6月28日)
オリジナルアルバムとしては現在のところ最も新しいアルバム。90年代以降、陽水の書く歌詞のメッセージ性はどんどん薄れていき、ワケの分からない歌詞になっていくわけだが、このアルバムはある意味、「シュールな歌詞」の到達点に達している。思うに、もう陽水には熱意を持って歌詞にすべき対象や事象はないのだろう。もう悟っているのだろう。シングルカットされ、ウィスキーのCMに起用された「新しい恋」の作詞は小説家の町田康が担当しているし、「長い猫」という曲の作詞は陽水の娘との共作だ。陽水が一人で担当した曲の歌詞は横文字やら言葉遊びやらが多様されたよくわからないものが多い。過去の輝かしい名盤たちと比べるとあらゆる点で劣っているように思えるのも事実だが、それでも、井上陽水と同じ時代に生き、リアルタイムで新譜が聴けるということは、何にも代えがたい喜びなのである。



追記
これだけの量の文章を一気に書くと誤字脱字や変換ミスやチグハグな言葉なんかが大量発生するなぁ。気にしないでください(まあ誰も読んでないだろうけど)。それにしてもファークって…、ヒドイな。
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Comments

まさか井上陽水の記事が読めるとは思いませんでしたよ。実は好きなんです(笑)。

この記事を読んで久々に今聴いてます。

「青空、ひとりきり」の『何かを大切にしていたいけど、体でもないし心でもない』って歌詞が好きです。グッと来ますよ~。

ベタですいません。
Posted at 2008.11.15 (22:08) by 志織 (URL) | [編集]
No title
「青空、ひとりきり」はどちらかというとマイナーだと思います。決してベタではないような…(笑)。僕もかなり好きです、「青空、ひとりきり」。陽水の全ての曲の中でベスト5には必ず入ります。

『何かを大切にしていたいけど、体でもないし心でもない』って歌詞いいですよね。その後の歌詞『きらめくような思い出でもない ましてや我が身の明日でもない』もグッときます。2番の「一人で見るのが儚い夢なら 二人で見るのはたいくつテレビ」ってシニカルな歌詞も良すぎ。サビの「楽しいことなら何でもやりたい 笑える場所ならどこへでも行く 悲しい人とは会いたくもない 涙の言葉でぬれたくはない」も痺れる。ってか全部良いです(笑)
Posted at 2008.11.16 (17:43) by yuji (URL) | [編集]
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