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母恋ひの記

13日土曜日に放送されたNHK時代劇スペシャル『母恋ひの記』の感想を。

普段は全くテレビドラマを見ないのだが、昨日放送された『母恋ひの記』の原作は、僕の好きな作家の一人である谷崎潤一郎の中篇小説「少将滋幹の母」。これは見ないわけにはいかない。谷崎の代表作といえば長編小説の「細雪」だ。過去に何度もテレビドラマ化、映画化、舞台化され、その美しくも儚く壮観な物語は名作とされている。しかし谷崎の真骨頂といえばカオスを喉に詰め込んだような変態物語だ。「痴人の愛」「卍」などのカオス作品こそ谷崎潤一郎の味が出ている。谷崎作品を形容する時によく使われる言葉として「妖艶」やら「耽美主義」やらがあるが、個人的に思うに妖艶というよりは単に「エロス」なのであり、耽美主義の『美』の部分は病理的に激しく倒錯している。『母恋ひの記』の原作である「少将滋幹の母」は間違いなく「細雪」側の作品ではなく「卍」側の作品である。

話の大筋は――80歳の老人(大滝秀治)が50歳も年下の美女(黒木瞳)と結婚し幸せな日々を送っている所からはじまる。ある日、大滝秀治は時の権力者・時平の陰謀により、自分の妻を引き出物として上納せざるを得ない状況に追い込まれる。酒の席での酔った勢いもあり大滝秀治は、泣き叫び嫌がる黒木瞳の腕を引っ張り、時平にプレゼントする。その4~5年後に大滝は亡くなる。ここまでがプロローグ。話の本筋は大滝と黒木の間に生まれた子供・滋幹(劇団ひとり)が母と再開するために生きる紆余曲折の人生を40年という長い月日を背景に描いたものだ。

時代は平安時代が舞台なのだが、上記のストーリーを見れば一目瞭然なように、平安時代である必要性が全くない。幼い頃に生き別れになった母親を子供が生涯にわたって探す話…現代でも充分描ける(バラ珍)。故に「NHK時代劇スペシャル」となっているが、言葉遣いや格好や舞台セットなどが時代劇風なだけで話の内容はいつの時代でも問題のない普遍的なものだった。

冒頭に大滝秀治と黒木瞳の幸せな結婚生活を描くためにベッドシーン(布団か)のようなものがあるのだがこれが衝撃だった。「ワシみたいな老いぼれが夫で幸せか」「幸せですとも」みたいな会話をしながら大滝秀治が黒木の両肩に手を置くのだが、徐々に大滝の右手が黒木の肩から胸にスライドしているのだ。このスライドの仕方が絶妙に曖昧にナチュラルだった。しかし胸にスライドしたものの大滝の手は硬直したかのようにずっとパーのまま。揉まないのかよ…みたいな。逆に不自然だったな。

酒の席で最愛の妻を時平に渡さなければいけなくなり発狂するシーンのカオス感も秀逸だった。大滝秀治の悲壮感溢れる顔は凄い迫力だった。風がビュービューと吹いていたり雷が鳴っていたりする演出は、いかにも文学作品の映像化といった趣が出ていて良かった。

母と再会するべく頑張る滋幹(劇団ひとり)も、いい感じに発狂していた。何度か会う機会が与えられているのに異父弟が「あなたは母を美女だと思っているかもしれないが今は違う。疱瘡(顔がブツブツになる伝染病)にかかりヒドイありさまだ」と言われ、滋幹は会うのをやめてしまうのだ。本当は疱瘡なんてのは異父弟による嘘で実際は今でも綺麗なままなのだが…。滋幹は母に対しマザコン以上の感情…いわばエディプス・コンプレックスくらいのドロドロとした感情を抱いているのだろうか。それとも幼くして母と別れたため自分の中で母が神格化されたのだろうか。いずれにせよ「母の顔が醜くなった」という嘘情報を耳にしたがために会うのを止めてしまう。そして狂う。挙句の果てには暗がりの部屋で発狂しケタケタ笑ってる(嗚呼、谷崎っぽい)。

最後はなぜか山篭りして修行し(リョウガか)、身を清めた後で推定60歳の母に会いに行く。しかしちょうど十日前に亡くなったとことを知る(「天の夕顔」のオチと被っているような)。絶望する劇団ひとりを映しながら物語りは終了。なかなか面白かった。劇団ひとりの演技も良かったし(滝にうたれるシーンはコントっぽかったけど)。NHKだから途中でCMがないのも良い。時間も9時から始まって10時15分には終了。ほどよい長さだ。2008年に見たドラマは「めぞん一刻」と「母恋ひの記」の二つなわけだが、「めぞん一刻」の10倍は面白かった。

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